引退馬支援の「いま」

「引退馬支援を考えよう〜私と支援の出会いと、これからの願い〜」という記事で、引退馬支援の始め方について書かせていただきましたオラシオンです。今回は実際に支援を続けている「いま」をご紹介していきたいと思います。

SNS等のツールが増えたことで、それぞれの馬たちの近況が伝わりやすくなりました。

牧場さんや乗馬クラブさん、また関係者さんがこまめにツイートして下さったり、動画をアップして下さっています。

平成初期であれば、引退した馬の消息を探したり、牧場見学に行くのにも情報を手に入れるのは一苦労するものでした。

ネットも今ほど使い勝手が良くなかった頃ですし、私はネットに置いてけぼりを喰らいましたので(笑)

それでも今は使い勝手の良い(有り体に分かり易い)ツールを使って、牧場さんのツイートを見たり、近況を読んだり、元気そうな動画を見る事ができます。

もう30歳を超えるおじいちゃん、おばあちゃんになったかつての名馬が元気にしているのを見られるのは、本当にありがたいことです。

近年、そうした「引退馬支援活動」の活発化により、様々な試みがスタートしていたりします。

私が一番大好きなトウカイテイオーの産駒、クワイトファインを種牡馬にしよう!と言うクラウドファンディングも、大きな注目を集めていました。(2020年1月15日に終了)

トウカイテイオーを遡っていくと、三大始祖『バイアリーターク』に辿り着きます。

そんな世界的にも貴重なバイアリータークの血を引くクワイトファイン。さらに彼には、6頭もの日本ダービー馬の血が流れているのです。

まずはもちろん、父であるトウカイテイオー。
そしてそのテイオーの父である七冠馬シンボリルドルフ。
テイオーの5代母にして、牝馬最初の日本ダービー馬ヒサトモ。
三冠馬ミスターシービー。
五冠馬シンザン。
そして、タニノムーティエ。

3頭の三冠馬の血が入っているというのも、凄いことですよね!

そのクラウドファンディングも、掲げていた「60日で600万円」という目標をクリアしただけでなく、578人ものパトロン、そして目標の131%にのぼる7,883,000円もの支援金が集まりました。

この60日間、途中には支援がなかなか集まらずジリジリする事もあったのですが、残り10日を切ってから、ミスターシービーの後方一気の差しを彷彿とさせる伸びを見せたのです。残り7日間で600万円を突破し、あれよあれよと700万円を超えました。

こうした成功は、プロジェクトに関わった一人一人のツイートや、発起人さん達の地道な広報活動に依るところも大いにありますし、引退馬に目を向ける競馬ファンが増えたり、ホースマンの中にも支援活動をする動きも広がったことも起因するのでしょう。

そんなことも相まって達成したクラウドファンディングも、そこからがスタート。

産駒が無事に誕生することを祈念しています!
そんな明るいニュースがある一方で、支援活動をしていると、嬉しいことばかりがあるわけではありません。

ニュースにもなりましたが、2019年には名馬のタテガミを切られる事件が相次ぎました。

私の支援しているNPO引退馬協会のフォスターホース・タイキシャトルと、繋養先のヴェルサイユファームさんの功労馬・ローズキングダムの被害を皮切りに、1993年ダービー馬・ウィニングチケットと、その同期の菊花賞馬ビワハヤヒデも被害が確認されました。

ハサミで切ったような鋭利な切り跡で、もし馬が暴れていたら、そのハサミや刃物などが馬に怪我を負わせていたかもしれないと思うとぞっとしました。

それが原因で命を落とす結果に繋がっていたかも知れないのです。
本当に恐ろしい、そして馬への配慮や愛情に欠けた事件だと思いました。
これは人的な事件ですが、それだけでなく加齢による心配もあります。

先述のNPOのフォスターホース・ナイスネイチャは1988年生まれ。

母・ウラカワミユキが36歳まで生きてくれた血統からか、ネイチャも元気に長生きしてくれています。しかし寝転がった後、立ち上がるのに苦労しているのを見ると、少し心配になることも。

馬は自分で立ち上がれないことは、即ち「死」を意味するからです。

また病気も心配の種になります。
人間と同じで、馬も年齢と共に発症しやすくなるようです。
2017年に虹の橋を渡ったエイシンバーリンは、芦毛特有のメラノーマにも悩まされていましたし、その治療状況の報告を読んでは心配になったことも忘れていません。

2018年には、事故で大怪我をして安楽死の処置をしなくてはならなくなったキタノダイマジンの訃報もありました。その事故は私の誕生日に起きたのですが、どうやら白鷺が大きな翼を広げて飛んでいたことが怖くてパニックになってしまったのだとか……。

馬は怖がりですから、パニックになって逃げまわって柵を越えて怪我をしてしまったのだそうです。
そして、2019年7月には、最愛のトウショウオリオンも虹の橋を渡ってしまいました。
オリオンの最期があまりにも哀しくて、今でも詳しく書くことができないのですが、そんな哀しみも支援活動の中で得た私の財産です。

でも、オリオンやバーリン、そして事故による怪我ではありましたが、馬生を全うしたダイマジンは、幸せな競走馬だったと思うのです。

乗馬クラブや養老牧場といった行先がなく、悲しい運命を辿る馬は多いです。
最近ではTCCやバジガクさんの活動、NPO引退馬協会の活動をはじめ、引退馬のことを扱った映画も上映されたりと、引退馬を取り巻く環境が変わってきました。
Twitterでも『馬券や場内で買えるものの値段に、引退馬への寄付金を上乗せしていいのに!』と言う意見を見かけることもあります。

そうは言っても、まだまだ引退馬を取り巻く環境を変える入口に立ったくらいなのでしょうから、これからも色々な方法で活動を広げて行けるように、また、微力でも支援していきたいと思います。

今は支援を遠巻きに見ているだけの人にも、馬券にしか興味のない人にも、少しでも興味を持って貰えるような活動や試みが増えること──色んな意見やアイディアが出て、一頭でも多くの引退馬の馬生が全うできるようになる事を、願うばかりです。

写真:Horse Memorys

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