桜花賞では惜しくも敗れたものの、鮮烈な印象を残していった馬たちを紹介する企画、後編です。

前編ではシンメイフジ・メデタシ・ヴィーヴァヴォドカをご紹介しました。もちろん他の年に開催された桜花賞にも魅力的な馬がたくさん出走しています。勝ち馬だけではない、魅力的な出走馬たちから新たに3頭ご紹介していきましょう!


ネームヴァリュー


デビューから2連勝した本馬は堂々の2番人気で阪神3歳牝馬S(現阪神JF)に出走するも、10着と大きく負けてしまいます。その後も5着→4着と振るわず、桜花賞では12番人気まで評価を落としていました。そしてその人気を大きく覆すこともなく、結果は11着。続くオークスも10着と「もう終わってしまった馬」という声も聞こえ始めます。
それでも陣営は引退ではなく、彼女の真の実力が発揮されるまで粘る判断をします。

そしてついに復調の兆しが見られるのは、それから1年以上経ってからのことでした。
新馬の頃に2連勝を飾った得意の札幌競馬場で、再び勝利を手にします。しかも、3戦2勝という好成績。その2勝を引っさげて、ネームヴァリューは地方・船橋の名伯楽・川島調教師のもとに移籍します。
芝のレースにしか出走した事のないネームヴァリューにとって、地方のダートレースは全くの未知数でした。しかし初戦・第2戦を圧勝すると、いきなりG1東京大賞典で4着(地方馬最先着)となり、その年度のNRAグランプリ最優秀牝馬を受賞。さらには翌年、好メンバーが集まった交流G1帝王賞を勝利。牝馬ながら、NRAグランプリの年度代表馬を獲得するという快挙をなしとげました。
諦めずにチャレンジを続けた事で最終的には未知の条件で花開く──そのネームヴァリューの素敵な生き様は、非常に生きる活力をくれます。

未来のダート女王すら出走するのが、桜花賞。そのレースの懐の深さもまた、魅力的のひとつなのだと思います。
ネームヴァリューの出た桜花賞は、勝ち馬であるテイエムオーシャン(芝のG1を3勝)をはじめ、コディーノの母・ハッピーパスや、ブラックシェルとシェルズレイの母・オイスターチケットなど興味深い顔ぶれが揃っていました。出走表を眺めるだけでも様々な発見や出会いがありますよ!

ベリーベリナイス

ネームヴァリューとはまた違う印象的な道のりを歩んだのが、このベリーベリナイス。
デビューから6戦連続で、地方競馬のダート1000mレースに参戦。そこで2勝すると、中央競馬の札幌競馬場で芝1200mのレースを2連勝。しかし再度ダートに戻ったあと、タイトなレース選びが響き長い休養に入ります。2歳の10月までで既に9戦。なかなか当時でも見られない、過酷なローテでした。

そんな彼女でしたが、長期休養を明けると、いきなり桜花賞へ参戦。
ダイワスカーレット、ウオッカ、ロープデコルテ、アストンマーチャン、ピンクカメオと、超豪華なメンバーたちと名前を並べます。しかし結果は、18頭中17着。レースの流れについていくのが精一杯の惨敗でした。
その後はオークスを狙わず、休養に入ります。9月に復帰するも勝ち星を挙げることは叶わず、中央を離れて地方へ。地方でも33戦1勝とふるわず、そのまま引退となりました。

それでも、世界レベルの牝馬たちと肩を並べた華々しい記録──そして記憶は残っています。そしてもうひとつ誇りたいポイントがあります。ダイワスカーレットの引退が2009年春(12戦)、ウオッカの引退が2010年春(26戦)だったのに比べ、2011年夏(52戦)に引退のベリーベリナイスのタフさは、ライバルたちと比べても誇れる長所だったのではないでしょうか。

チューニー

本企画最後に紹介する馬は、このチューニーです。
さすがに桜花賞出走馬たちとあって語りたい馬はたくさんいたのですが、今回は泣く泣くこの6頭に絞らせていただきました。

さて、本馬は桜花賞前に3戦し2勝、しかもそのうち1勝は重賞・デイリー杯クイーンCという充実したものでした。最有力の1頭に数えられてもおかしくない戦績を提げて桜花賞に向かったものの、単勝人気では9番人気という評価を受けました。たしかに、牝馬三冠を制覇するスティルインラブ、ダービー馬ドゥラメンテの母となるアドマイヤグルーヴを中心に、数々のタレントが揃った世代ではありました。しかしそれでも当時の私にとっては、チューニーが9番人気というのはかなり不満の残る低評価に感じたのです。
そんなチューニーの桜花賞の結果は、12着。
やはりオッズが正しかったのか、と画面の前で肩を落としたのを覚えています。
続くオークスでも、彼女は13番人気とさらに人気をさげます。桜花賞での12着が響いたのでしょう。その年のオークスは「上位2頭(アドマイヤグルーヴ、スティルインラブ)に桜花賞未出走の2歳女王・ピースオブワールドがどこまで食いつくか!?」というような雰囲気が漂っていて、伏兵・チューニーの注目度は本当に低いものとなっていました。
しかしオークス当日、単勝93.7倍のチューニーは前目で粘り強い競馬をし、なんと2着を確保。戦前の評価を覆す走りに、驚いた人も多かったかもしれません。1着スティルインラブとの馬連は、244.8倍の万馬券でした。「見たか、競馬ファン!」と思わずガッツポーズをするほど嬉しかったのを覚えています。

この馬も、私にとっては「オークスの激走」とともに「桜花賞で負けた時の悔しさ」が印象に残っている馬です。


さて、長々と書きましたが、楽しんでいただけたでしょうか?
みなさんも印象に残っている桜花賞出走馬たちがあればぜひ編集部までご連絡くださいね!

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