ダービー本命馬はこれだ!-1頭目-

クラシック戦線も、牡牝ともに1冠目が終わり、勢力図が浮き彫りになってきた印象だ。

ダービーの本命を明かす前に、これまでの戦いを振り返り、その力関係を整理していきたい。

 

牡馬クラシック戦線は、

①皐月賞前、朝日杯を豪快に追い込んで勝利したリオンディーズ

②無敗でステップを踏んできて未だ底を見せていなかったサトノダイヤモンド

③同じく無敗でここまで駒を進めてきたマカヒキ

この3頭が「3強」として注目を集めていた。

 

しかし、皐月賞本番は厳しい流れのタフなレースになり、後方で待機していた今年の共同通信杯の勝ち馬ディーマジェスティが、8番人気ながら異次元の末脚で3強を撃破した。
共同通信杯は近年、皐月賞ととても相性が良く、過去にはゴールドシップやイスラボニータが同じローテーションで皐月賞を勝利している。
さらにディーマジェスティは、長い脚を使えるという長所もあり、距離も伸びた方がいいとの見方も多いことから、ダービーでも有力視されるだろう。

 

敗れた「3強」のなかで、最先着したのはマカヒキ。
勝ち馬よりさらに後方から追い込んだが2着までだった。陣営は、敗因を「位置取りの差」と分析し、ダービーでの逆転を狙っている。

 

3着は、無敗できさらぎ賞を制し、1番人気に推されていたサトノダイヤモンドだ。中団の絶好ポジションを追走していたが、直線の不利も影響したのか、期待されていたような伸びを見せることは出来なかった。
しかし、陣営は皐月賞前から「目標はダービー」と語っていたこともあり、今回の仕上げは目一杯ではなく、まだまだ上積みがありそうだ。

 

気になる3強のもう1頭、リオンディーズは4位で入線したが、直線で外側に斜行し、外にいたエアスピネルとサトノダイヤモンドを妨害したとして降着。
リオンディーズとハナ差で5着に入線したエアスピネルが4位に繰り上がった。
当のリオンディーズは、一族特有の気性の荒さが露呈した格好となり、力を発揮できなかった。

 

そしてもう1頭。

繰り上がりで4着になったエアスピネルについてもまとめたい。
2歳時、新馬→デイリー杯2歳Sと連勝し、朝日杯では、コンビを組む武豊騎手のJRA平地GⅠ完全制覇がかかっていたこともあり、単勝オッズ1倍台の圧倒的支持を集めた。
しかし、最後の最後、最後方待機をしていたリオンディーズに差しきられてしまう。
そこからは、他の無敗馬の台頭や、距離不安も囁かれ、3強とは実績、評価ともに水を開けられてしまっていた。
そのような見立てで迎えた皐月賞は、道中リオンディーズを前に見て、サトノダイヤモンドを後ろに見る中団前あたりの絶好位からレースを進め、水を開けられたと思われていた3強と差のない勝負を演じたのであった。

 

皐月賞が終わり、ダービーへ、残り時間は限られている。
青葉賞やプリンシパルS、京都新聞杯と、ダービートライアルもあるが、私は皐月賞組の中から本命を選択したい。
皐月賞組から選ぶ理由は、やはり一度GⅠの舞台を経験しているという点である。
ダービーは、皐月賞と同じくスタンド前発走。GⅠともなれば、レース直前の歓声が物凄い。初GⅠがスタンド前発走は、馬によってはとてもマイナスな面があるのだ。
このような視点から、皐月賞組は一度経験している点でアドバンテージがある。
さらにもうひとつ理由がある。それは、GⅠというタフなレースをこなしているアドバンテージがあるところだ。
近年、2歳、3歳重賞が増設されたことで、それぞれのレースレベルが前より一枚ほど落ちた印象がある。
それがなくても、GⅢ、GⅡとGⅠのレースレベルの差は明らかだ。こういった点でも、皐月賞組は大きくリードしている感がある。

 

それらをふまえた上で、私が皐月賞組から選ぶダービーの本命はズバリ、エアスピネルだ!

では、本命の要素を説明していこう。

高い潜在能力

エアスピネルは、昨年9月の阪神開催の芝1600mでデビューした。
好スタートから3番手に取り付くと、3コーナーではコースの切れ目に驚くなど幼さを見せながら、最後の直線では後ろから来る人気馬を待ってから追い出し、2番手から上がり3F33.9でまとめてデビュー勝ちを収めた。
この勝ち方に、とてつもないスケールの大きさを感じたのだ。
手綱を執った武豊騎手もこの頃から能力の高さを評価していた。
2戦目はデイリー杯2歳S。この日は大雨で馬場はぐちゃぐちゃ。底力がモノを言うレースで、大外を回りながら、後続を3馬身ちぎって快勝。
個人的な話、武豊騎手のファンである私は、「豊さんのJRA平地GⅠ完全制覇は貰った!」と半ば確信していた。
それが、朝日杯で衝撃的な惜敗。
それでも後続はちぎっており、武豊騎手もクラシックで必ずリベンジすると誓った。
そこからも、高い潜在能力があるという自信がうかがえる。
先行集団から速い上がりが使え、GⅠで中団からの競馬もこなす。さらにレースに行くと折り合いに不安がないことなど、どんな競馬にも対応できる強みもある。
また、足の回転が速いためスタートも良く、仕掛けたときの反応の速さも鋭い。
さらに陣営は、「心肺能力がとても高い」と話している。これは競走馬にとって大きなアドバンテージとなる。
クラシックを戦っていく上で重要な能力を、エアスピネルは持ち合わせているのだ。

一戦ごとに成長を遂げる

迎えた3歳緒戦の弥生賞。戦前は、馬体がマイラーだとか、血統で距離不安があるとか、他の有力馬(マカヒキ、リオンディーズ)が強すぎるなど、わりと散々な言われようだった。
実際、エアスピネルは気性に難ありで、2歳時のパドックは常にエキサイトしてしまっていた。
弥生賞の頃には2歳時より改善されたものの、まだまだ幼かった。
レースではスタート直後に口を割り、武豊騎手も抑えるのに一苦労。レースは、弥生賞まで2戦2勝できたマカヒキが先に抜け出した朝日杯を勝ったリオンディーズを差しきり1着。
エアスピネルは、その争いから2馬身離された3着だった。
客観的に、その2馬身はとてつもなく遠く感じてしまったが、武豊騎手は「逆転不可能ではない」と断言した。
そして迎えた皐月賞では、陣営の弛まぬ努力により急成長を遂げたエアスピネルの姿があった。
パドックでは全くイレ込む素振りを見せず大人しく周回。
そして、レースでもスタートから折り合い、水を開けられたと思われていた3強と最後まで差のない勝負を演じたのだ。
陣営の工夫を1つ紹介したい。
2歳時から坂路調教を中心にトレーニングを行っていたが、弥生賞後の中間はコース追いに重きを置いて、見事気性の改善に成功した。
坂路調教は一気に坂を駆け上がるため、馬は我慢することを必要としないが、コース追いは前半しっかり折り合い、後半にかけてスピードを上げていく、より実践に近い調教なのだ。
こういった陣営の工夫があって、着実に成長した姿を皐月賞で見ることが出来たのである。

ダービーへの適性

コース調教で精神的に大きな成長を遂げたエアスピネルは、潜在能力とかけ合わさって未知なる可能性を思わせる。
その上で、ダービーへの適性は、皐月賞の上位組と比較しても高いと感じる。
日本ダービーは例年、内有利の前有利という馬場状態であることがほとんどだ。
皐月賞馬ディーマジェスティをはじめ、マカヒキやサトノダイヤモンドは、皐月賞でエアスピネルよりも後ろでレースを進めている。
前に行っていたリオンディーズも、今回のことで後ろから折り合い専念の競馬になると推測される。
そうすると、エアスピネルの自在性は大きな武器になる。
もちろん、ダービー5勝の武豊騎手も、これらのことを分かった上で最善の選択をすることは間違いない。
これに内枠を引くことができれば、これはもはや、勝利の方程式的なものなのではないか。
東京競馬場の長い直線で、強いディープインパクト産駒に勝るのはとても大変なことだが、武豊騎手には、是非現役時代の相棒を退けての先頭ゴールを果たしてほしい。

ロマンを追い求めるのがダービー

競馬は、ギャンブルだ。それは事実としてある。しかし、純粋に競馬を愛する者として、ロマンを追い求めるのが性である。

エアスピネルの母はエアメサイアという、2005年の秋華賞(GⅠ)を勝利した名牝である。
2014年9月12日、12歳という若さで、
放牧中の事故により天に召されてしまった。活躍馬を多く出している牝系なだけに、悔やまれる事故だった。
そのちょうど1年後の2015年9月12日、息子であるエアスピネルがデビュー戦を迎えたのである。鞍上には、母の全てのレースで手綱を執った武豊騎手。
先頭でゴールした時は身が震えた。
「なんてロマンチックなんだろう。この馬はきっと大きな仕事をやってのける」
自然とそう思った。
母エアメサイアは、3歳時のオークスでシーザリオにゴール前惜しくも差され、悔しい2着に終わった。
奇しくも今年のダービーには、そのシーザリオの息子であるリオンディーズも出走する。
11年の時を超えて、リベンジマッチの時を迎えたのである。
舞台は同じ東京競馬場芝2400m。
競馬の神様のイタズラは、実に憎たらしい。

私には、5月29日15:45頃、芝コースでウイニングランするエアスピネルと武豊騎手の姿が目に浮かぶ。

文と写真・ゆーた