サナシオン~飛越の華~

2015年・東京ハイジャンプの5号障害。
一瞬にして、目を奪われた。
一瞬にして、その飛越の虜になった。

 

その馬のゼッケンに書かれた名前は「サナシオン」。

 

「飛越に華がある」

 

それが彼に対する第一印象だった。

そのまま軽快な飛びを魅せての逃げ切り勝ち。やっぱり、飛越に華がある。

 

 

飛越の上手い障害馬。
それは騎乗者の技術、管理、馬の持つ身体能力・センスの賜物。
また飛越の特徴について、ある程度の言語化が可能かもしれない。
「こんな所が上手い」と。

 

そしてその中に、稀に「飛越に華のある」障害馬がいる。
ジャンプが目に留まり、記憶に残る。こちらの言語化は恐らく、不可能。

 

サナシオン。

 

彼は障害へ果敢に、加速しながら向かっていく。
そのスピードに乗ったままジャンプする。担当助手の方でさえ、「見ていてハラハラさせられる」というほどのスピードで。

 

そしてスピードを武器に、主に逃げの戦法をとる。逃げ馬ゆえ、見ている側も毎回、四角以降は手に汗握る。

 

しかし人間の動揺など素知らぬ顔。
その走りと飛越で、当のサナシオンは障害転向後8戦6勝・2着1回・3着1回、J-G2を2勝(2015東京HJ、2016阪神SJ)と安定した戦績を残している。

 

危うさを垣間見させた安定性。

 

そして肝心の飛越。
少なくともセンスに関しては群を抜いている印象がある。
スピードに乗った飛び、身体の使い方の巧さ。
「飛越でリードを広げる」

……障害競走馬としての天賦の才を持って生まれてきた、そんな馬だ。

 

事実、彼は元より「試しに障害を飛ばせてみたら巧かった」天才肌だという。

 

しかしただ上手いだけでもなく、鮮烈な印象に残る飛びをする。
主戦・西谷誠騎手の美しい騎乗も相まって、決まった時のジャンプはどの角度からどの瞬間を切り取っても画になる。

 

見ている者を虜にしてしまう華。

それは練習で得る事のできない、天性のもの。

 

華麗で強いサナシオン。

 

東京ハイジャンプの5号障害のように、
一つの飛越で人を虜にしてしまう。
それが「飛越に華がある」という事なのかもしれない。

文・川井旭

写真・がんぐろちゃん