モーリスについて

2015年JRA賞年度代表馬と最優秀短距離馬に輝いたモーリス。年間無敗という金字塔を打ち立て、今ではアジアのマイル王と称されている。今回は私の目線から、モーリスの魅力についてを様々な視点から語ってみたい。

 

まずはモーリスの血統について。父はジャパンカップを人気薄で制したスクリーンヒーロー、母はメジロ牧場の血を5代に渡って受け継がれて来たメジロフランシスである。母の父は、凱旋門賞馬カーネギー。父の父は朝日杯と春秋グランプリを制したグラスワンダー。血統表だけを眺めると、クラシックで活躍しても不思議ではない。デビュー戦をレコード勝ちし、その後2勝目を挙げオープン入り。その後は勿論、クラシックのトライアルに幾度も挑戦した。しかし、成績は振るわなかった。
その後、吉田直弘厩舎から堀宣行厩舎に転厩して7ヵ月の休養を経て条件戦から復帰。そこで一気にディフェンディングチャンピオンまで登り詰めた路線が、1600m(1マイル)を得意とする「マイラー」の世界だった。

クラシックで活躍してもおかしくない馬がマイル界でアジアチャンピオン、そして年度代表馬に。それまで混沌としていた日本のマイル界に絶対王者が遂に誕生したのと同時に、私達競馬ファンの度肝を抜く結果となった。

誰もが驚いたダービー興チャレンジトロフィー

最初に特筆すべきレースといえば中山競馬場で行われたG3ダービー興チャレンジトロフィーだろう。

このレースには後に安田記念に出走するエキストラエンド、ブレイズアトレイル、クラレントが同時に出走していた。スタートは出遅れて最後方からの競馬に。1000m通過タイムが58秒0というハイペースに恵まれた点もあり、残り200mの時点では抜け出しを計るクラリティシチーらをまとめて交わして先頭に立った。普通の馬なら、これ以上差が一気に広がる事がなく、少しずつ差を広げていくだろう。
しかしモーリスは違った。中山の急坂を迎えた途端、一気に加速したのだ。

 

「中山の急坂であれ程加速する馬は今まで見た事がない。有り得ない」

 

これは私の率直な感想だ。そして恐らくそれは、誰もが感じた事だろう。この時点で私は、ながらく続いてきたマイル界の混沌とした時代が、遂に、モーリスによって終止符が打たれる事を確信したのである。

香港で世界に見せつけた勝負根性

実は、私の現時点(6月7日現在)でのベストレースは安田記念でも、マイルCSでも、そしてチャンピオンズマイルでもない。

香港マイルである。

それだけの評価を与えるに等しいレース内容だったのだ。
このレースに、日本馬では、安田記念、マイルCSと春秋マイルG1制覇を果たしたモーリス、マイルCSでモーリスの2着だったフィエロ、富士Sでサトノアラジンを差し切ったダノンプラチナらが参戦。迎え撃つ地元香港の精鋭は、前年圧倒的な強さで香港マイルを制し、「英雄」と称されていたエイブルフレンドが待ち構えていた。
戦前の評価は、エイブルフレンドとモーリスの一騎打ちとされており、1番人気はエイブルフレンド、モーリスは2番人気だった。

レースではモーリスの後ろにエイブルフレンドがピッタリマークする形に。最後の直線では2頭の叩き合いで共に前を行くジャイアントトレジャーを追う。
残り300m。2頭の叩き合いで前に出たのは、モーリスをマークしていたエイブルフレンド。誰もがエイブルフレンドの連覇を確信しただろう。しかし、ここからモーリスが一気に逆襲。1度は前に出られたエイブルフレンドに並ぶ間もなく差し返して見せ、先に抜け出したジャイアントトレジャーもあっさりと交わしてゴールイン。

 

「まるで漫画の世界を観てるかのようだった。そして、バケモノだ」

 

私の他にも、そう評した人が少なからずいるだろう。恐らく、モーリスの評価を上げた決定的なレースだったに違いない。

夢のローテーション

先日の安田記念でまさかの敗戦を喫し、今後のローテが未定となっているモーリス。ここからは主観的な話になるが、私が思い描く、夢のローテーションをいくつか述べたい。

 

ジャックルマロワ賞→ムーランドロンシャン賞→BCマイル→香港マイル

これはある3頭の競走馬との対決を夢見たローテーションである。1頭目は、フランスのソロウ。2頭目はアメリカのテピン。3頭目はオーストラリアのウィンクスだ。世界中でもこれら3頭にモーリスが加わって、「マイル四天王」と噂されており、対決が非常に楽しみなローテであろう。

 

札幌記念or愛チャンピオンS→凱旋門賞→マイルCS→有馬記念

これは私の欲張りである。だが、先程述べたモーリスの血統をおさらいして欲しい。
母の父は凱旋門賞馬のカーネギー。父の父は春秋グランプリ制覇のグラスワンダー。共にクラシックディスタンスを得意とした血が入っているのにも関わらず、その距離を試さないのはあまりに勿体無い気がするのだ。このまま日本のマイル王者として君臨するのか、それともクラシックディスタンスへの挑戦か、非常に楽しみなローテの一つである。

引退後、絶対にやって欲しい配合

まだ話は出ていないのだが、引退の話もぼちぼち出てくる頃だろう。
種牡馬としての活躍も勿論期待される。
そこで、私が絶対にやって欲しい配合を述べていく。

一つ目は、モーリス×アルビアーノだ。

 

重賞勝利馬のアルビアーノはアメリカで生まれた外国産馬。血統面でのクロスが魅力的だ。
ダンジグ4×5とヘイロー5×5、そしてノーザンダンサー5×5のクロスは日本の競馬にピッタリではないだろうか。
双方の成績を考えれば、恐らくはマイラーになるだろう。たがあるいは、クラシックディスタンスにて底力を発揮できるのかもしれない。


そして二つ目は、モーリス×ウオッカ

 

64年振りの牝馬でのダービー制覇を皮切りに、マイルでは安田記念を連覇し、G1の勝利数はあのディープインパクトと同じ数の7勝。

注目して欲しいのは血統面のクロスである。父方にロベルト、母方にRivermanとがそれぞれ4×5のクロスになる配合だ。父方ロベルト系の活躍と言えば、モーリスもそうだが、有馬記念馬ゴールドアクター、皐月賞馬ディーマジェスティ、そしてウオッカ等と、日本競馬で鮮烈な印象を残す圧倒的な爆発力を売りにしている。母方のRivermanは仏2000ギニー、イスパーン賞を制しており、どちらも爆発力と距離の融通性を兼ね備えたとてもワクワクする配合だ。また、これはウオッカだけに留まらず、他のロベルト系牝馬との配合も視野に入る可能性が高い。

 

もしこうした配合での爆発力を見せられたら、リーディングサイアーも決して大それた夢ではない。

ここまで、モーリスについて熱く語らせて頂いた。

 

モーリスはまだまだ進化をし続けると思う。さらなる歴史的な勝利を夢見つつ、作家の菊池寛さんの造語である「無事是名馬」にならって、まずは無事に走り終えて引退を迎える事を祈るばかりである。

文・KOBA

写真・がんぐろちゃん、ゆーた