雲が晴れたら~アップトゥデイト~

2017年9月16日、阪神ジャンプS。

 

雲が晴れた瞬間だった。

陣営が、ファンが待ち望んでいた瞬間だった。

そしてその太陽は、いつにも増して沢山の人々の笑顔に囲まれていた。

 

人に笑顔をもたらす競走馬。

馬と人を、人と人を、固い絆で結ぶ競走馬。

それが、障害王者アップトゥデイトだ。

彼を愛する陣営とファンでウィナーズサークルが沸いた、2015年の中山グランドジャンプ、そして暮れの中山大障害。

自らの輝きで、人々に笑顔を与えるアップトゥデイト。彼はまさに、障害界の太陽である。

 

更なる飛躍が期待された2016年春。

突如として飛び込んできた報せは、骨瘤による中山グランドジャンプ回避というものだった。そして復帰戦の新潟ジャンプSでの8着という結果。

太陽に陰りが見え始めたのではないか……そんな思いが一瞬、脳裏を過った。

 

この夏からアップトゥデイトは、およそ1年にわたるもどかしい日々を送る事となる。

雲の隙間から射し込む光は見えるのだ。毎回、レース内容に強さは見いだせる。しかし結果は2着や3着といった惜しいもの……。

 

それでも障害界の太陽は必ずや、輝きを取り戻す。視界が開ける日は来る。

ファンはそう信じ、彼が再び先頭でゴールを駈け抜ける事を願った。

その中で迎えた2017年、阪神ジャンプS。

62kgのトップハンデを背負いながらもアップトゥデイトは、単勝1.8倍の一番人気に推されてパドックに登場した。いつもの愛らしい、それでいてどこか大人びた姿で。

そしてそのレース内容は「王者の貫禄」、まさにその一言だった。

スタンド前でハナに立ったアップトゥデイトは、先行争いをしていたシベリアンタイガーとの差を広げ、終始先頭を譲らない。

その飛越も、慎重で巧みな「らしい」ものだった。

昨年の阪神ジャンプS以降、自らレースを作る積極的な競馬が印象的なアップトゥデイト。

このレーススタイルが完成すれば、彼はまた新たな境地へ達する事ができるのではないだろうか。

 

そんな予感が、現実のものとなった。

最終コーナーでミヤジタイガに迫られたが、アップトゥデイトは持ち前の勝負根性で二の脚を使い、再度、単独先頭に立った。

どこにそのスタミナが残っていたのだろうか。彼の持ち味である無尽蔵のスタミナで直線、後続を突き放し、6馬身差をつけた所がゴールだった。

1年9ヶ月ぶりの、待ち望んだ瞬間だった。

彼を覆っていた雲が晴れた。障害界の太陽が、輝きを取り戻した。

天候は生憎の雨だというのに、沢山の笑顔が青空に溶けてゆく。

そしてこの勝利は、アップトゥデイトを管理する佐々木調教師にとってのJRA通算500勝メモリアルであった。

奇しくも師の400勝は、同馬の新馬勝ちによって達成された記録である。

競走馬としてのデビュー、そして待ち望んだ復活と共に厩舎に喜びをもたらすとは、実にアップトゥデイトらしい勝利でなかろうか。

 

優勝レイを纏った、誇らしげな、そしてどこか愛らしい彼の姿に、阪神競馬場のウィナーズサークルが湧いた。

いつにも増して眩しい陣営の、そしてファンの笑顔。そして広がる「アップトゥデイトが勝った!」「これぞ王者の貫禄」……そんな、彼を愛し讃えるファンの声。

アップトゥデイトには、この光景がよく似合う。

彼はいつも、笑顔に囲まれている。

彼の周りでは馬と人が、人と人が、固い絆で結ばれている。

 

自らの輝きによって人々に笑顔をもたらすアップトゥデイト。その輝きが陰る事など、決してない。

彼はこれからも、陣営を、ファンを、そして障害界を照らし続ける事だろう。

ひときわ輝きを増した、障害界の太陽として。

文・川井旭

写真・わふー、たちばなさとえ

 

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