角居調教師の海外挑戦

「世界に挑戦できる人と馬を作りたい」

 

 

 

角居さんが厩舎を開業した時から、スタッフに言い続けている言葉です。

角居厩舎の海外初挑戦は、シーザリオの2005年アメリカンオークス。

そして、この初挑戦が、念願だった海外G1の初制覇となりました。

一言で海外挑戦といっても、その日を迎えるまでには大変な事ばかり……。

長時間の飛行機での輸送、検疫、さらには飲み水まで(人間だけでなくデリケートな馬のためにも必要)気を配らなくてはなりません。

 

日本でも海外でも同じ事をする!

いつもと変わらず!

 

それはとても大きな努力と注意が必要です。

 

例をひとつあげると、アメリカンオークス挑戦の際のことです。アメリカの洗い場では綱を張れず、ひとりが馬を持ち、ひとりが洗うそうです。

ですので馬を洗うという事だけをとっても、日本とは違い2人がかり。

そこでシーザリオの遠征前には、現地で急にスタイルを変えるという事がないように出国のしばらく前から綱を張らずに2人がかりで馬を洗う練習をしたそうです。

 

大きなレースだからといって、変わった事はしない!いつも通りに!

そういう角居さんの思いも、海外という環境のためには準備が必要です。

だからこそ少し前から海外のやり方に慣れさせる事が必要なんです。

それは同行するスタッフについても同様で、どれだけストレスなく海外で過ごせるかを重視したそうです。

人間のストレスが馬に伝わる事を防ぐために。

 

馬のストレスを少しでも減らすために、もうひとつやらなければならなかった事……それは飛行機を探す事です。

 

余計な経由なく、ダイレクトに現地へ着く飛行機を用意しなければならない!

なぜなら、慣れないコンテナに入る時間を少なくしたいから。そして経由した土地で倉庫にコンテナごと置かれてしまう事を避けるためでもあります。

馬の体調を考えたら当たり前かもしれませんが、それが当たり前にならないのが海外遠征なのかもしれません。

 

そこから考えても

“海外のレースに勝つ”

それが本当に大変なんだとわかります。

 

それなら……そこまで大変な思いをしてまで、何故、挑戦し続けるのか?

 

角居さんの言葉があります。

「日本馬が世界に勝つ事で“日本馬は強い”そう思ってもらえたら、世界中から日本馬が欲しい!買いに行きたい!という事に繋がるかもしれない。日本馬の強さを海外のホースマンに

認めてもらえる。日本の競馬を守る道を作れるかもしれない。それはホースマンとして大事な仕事のひとつなんです」

と……。

 

この言葉に、角居さんの強い意志を感じます。

 

そしてホースマンの海外挑戦における夢といえば、凱旋門賞!

 

日本馬の挑戦は続いていて、少しずつ勝利に近付いてはいますが、未だ日本馬の凱旋門賞制覇はありません。

角居厩舎からもヴィクトワールピサが挑戦しましたが結果は7着……

 

それでも角居さんは、今も前に進んでいます。

前へ!前へ!

『オールジャパンの厩舎を作る』

これだけ聞いたら

ん??どういう事??現実的じゃないのでは??

と思う人も多いかもしれません。

 

でも、角居さんは本気で考えています!

「誰もやらないなら、出来ないなら、作ればいい」

それが角居流なんです!!

 

2011年、東日本大震災。

日本が悲しみに包まれた年。

 

その年、角居厩舎のヴィクトワールピサがドバイワールドカップへの出走を決めました。

最初は出走させる事に悩んだ事かと思います。

 

角居さんがよく口にする2つの言葉を思い出します。

「私達の仕事は夢を売る商売」

「挑戦することに夢がある」

 

きっと、心の中で自問自答を繰り返していたかもしれません。

 

そしてヴィクトワールピサは、ドバイワールドカップに挑戦します。

その時、まさに角居さんが作りたい!と言っていた“オールジャパンの厩舎”組織が成り立っているかのように、日本から挑戦する馬達の関係者達……モチロン角居さんを含めた……多くの方たちが、日本に届くようにと《HOPE》と書かれたポロシャツを身につけていました。

 

日本に元気を届けたい!!

 

ドバイという遠く離れた場所で、大きな結束力が生まれたのです。

この大きくて強い気持ち・結束こそが、ドバイワールドカップ日本馬初制覇という快挙につながったのかもしれません。

 

しかも、日本馬トランセンドとのワンツーフィニッシュ!!

 

関わった全てのホースマンの努力が実ったものだと思います。

 

日本に元気を!希望を!

そのひとつの願いがキセキを生んだとも言えるのではないでしょうか?

角居さんが作ろうとしている

『オールジャパンの厩舎』

もしかしたら、このドバイワールドカップの年から第一歩を踏み出していたのかもしれません。

世界に挑戦するには……そして日本のホースマンの夢でもある凱旋門賞を勝つためには、その伝統の中に身を置き理解する事から始めなければいけません。

その実現に向けて角居さんがプロデュースして作ったのが“ワールドチャレンジ”です。

とにかく海外に慣れる事を目指すプログラムです。そしてその先に海外の競馬場競馬界への道がある!のでしょう。

 

夢の厩舎を作る事!!

 

もしかしたら、現実的ではないのかもしれません。

それでも角居さんは諦める事はしないでしょう!!

 

海外競馬への夢、それを叶えるためには、ただただ馬に期待するのではなく、人間の育成も必要なんだと考える角居さん。

 

この考え方は、角居さんが調教師になった頃から持ち続けている想いです。

「海外で走らせたい!そして勝ちたい! 」

抱き続けてきたその想いが、きっと角居さんの、角居厩舎の、夢へと繋がる事なんだと……私はファンとして信じて応援していきたいと、心から思います。

 

これからも、ずっと……

《角居厩舎の主な海外成績》

2005年

アメリカンオークス G1

シーザリオ 1着

 

香港マイル G1

ハットトリック 1着

 

2006年

メルボルンカップ G1

デルタブルース 1着

(2着 ポップロック)

 

2008年

ドバイDF G1

ウオッカ 4着

 

2009年

ジュベルハッタ G2

ウオッカ 5着

 

ドバイDF G1

ウオッカ 7着

 

2010年

マクトゥームチャレンジラウンド3 G1

ウオッカ 8着

 

2011年

ドバイワールドカップ G1

ヴィクトワールピサ 1着

 

2012年

クイーンエリザベス二世カップ G1

ルーラーシップ 1着

 

2015年

ドバイワールドカップ G1

エピファネイア 9着

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文・大島りえ

写真・山守 茂雄、ラクト、オガタKSN