期待の2歳馬、モンアムール・フードゥルブラン

近年の輸入繁殖牝馬のなかに、オンヴェラという馬がいる。現役時代にはフランスG1・マルセルブサック賞で2着に食い込んだ快速馬だ。
その4番仔モンアムールが非常に好馬体ということで、ウマフリ編集部のピックアップリストにあがっていた。
注目の2歳馬モンアムールについて、今回、馬主の平井さんにお話を伺ってみた。
ちなみにオンヴェラは、ディープインパクトとは2度目の配合である。今回のモンアムールは、セレクトセールでは7000万円近い額がついている。フランス語で「愛する人」という意味の名がつけられた馬は、どのような魅力を持つ馬なのだろうか。

雰囲気を持ってる子です。

平井さんの一言目は「予算の中で一番、心を魅せられた馬です」だった。
そして「兄弟はあまり成績は上がっていませんが、雰囲気を持ってる子です」と言葉が続く。
たしかにこれまで母オンヴェラが送り出してきた3頭の競走馬で、JRAで勝ち星をあげられたのは初仔のホーリーシュラウドのみ。それも地方を経由して5歳になってからの勝利で、険しい道のりだったと言える。
しかしこの仔、モンアムールは違うかもしれない。
平井さんはこの美しい馬体の牝馬に、特別な想いがあるのだろうか?
「大きなタイトルを狙えるところまでいってくれれば言う事はありませんが、それは今まで所有してきたどの子にも、同じ思いでいます。まずは無事で、しっかりと自分の持ってる力が出せれば良いと思っています
と平井さんは語った。
まずは無事でーーたしかに、そこから全ての道が始まる。
そのモンアムールは、ウオッカやヴィクトワールピサを管理していた角居調教師のもとでデビューを迎える。
「角居先生は尊敬できる方ですし、スタッフもしっかりしています。しっかりしているということは、育成でも体調の変化を見抜ける面でも信頼がおける厩舎です」
平井さんが角居厩舎によせる信頼は絶大だ。
今後のローテはどうなるかについても、平井さんは角居厩舎に任せる予定だ。
「馬を預けた以後は、馬主よりも真近で馬を管理している方々が一番良くこの子を理解していると思います。ですから、私はあまり口出しはしないようにしています。したがって、預けた以上はローテートも騎手選びも厩舎に一任しています。聞かれた時に返答するだけです」
厩舎と馬主の信頼関係。
ビジネスの関係ではあるが、それだけでは終われない関係でもある。
近くで見守ってきた名調教師の、経験と知識から導き出された判断のもと、モンアムールは羽ばたいていくのだろう。

モンアムール

セン馬になることは決してありません

そして平井さんは、モンアムールだけでなく、もう一頭2015年生まれ世代の期待馬をピックアップしてくださった。
「今年の2歳馬の中ではサンビスタの弟のフードゥルブランを楽しみにしています」
引退レースのチャンピオンズCでは、ホッコータルマエ・コパノリッキー・ローマンレジェンドらを相手に勝利を収めた名牝・サンビスタ。
その一族と平井さんの間には、大きな縁があった。サンビスタの全弟・ヨクエロマンボだ。平井さんはヨクエロマンボを所有していて、その走りに魅せられていた。
「ヨクエロマンボが仕上がり前に使った未勝利で強烈な能力を見せたので、グランド牧場さんにすぐ下の子はどうなっているのか問い合わせした。するとまだ残っているとわかり、すぐ見に行きました。グランド牧場さんはご自分で使いたいとのことでしたが、何とか譲っていただきました」
サンビスタ・ヨクエロマンボは共に、グランド牧場が送り出した名馬、スズカマンボの産駒である。
オークス・秋華賞・エリザベス女王杯を勝利して2013年のJRA賞最優秀3歳牝馬に選出されたメイショウマンボをはじめ、優秀な産駒を送り出していた種牡馬・スズカマンボ。しかし2015年の2月に心不全で急死している。種付けシーズンが始まるタイミングだったため、2015年の種付け数は2頭とごく少数。先述したサンビスタのチャンピオンズC勝利も2015年冬であり、種牡馬としての評価が上がっている中での惜しまれる死だった。
そのスズカマンボの血を継ぐ残り少ない産駒の中で、フードゥルブランにかかる期待は大きい。
兄のヨクエロマンボがデビュー前に気性面の問題でセン馬になっていたことも、フードゥルブランにかかる期待を大きくする。それが、さきほどの平井さんの台詞にも表れている。
「フードゥルブランの兄のヨクエロマンボは、表現的にはカチッとした子でした。しかしフードゥルブランは比べて伸びと柔らか味があり、性格も兄よりは従順な感じがしています。したがって、セン馬になることは決してありません。結果は走ってみないと何とも言えませんが、能力は持っている子だと思います」
平井さんの言葉の奥には、大きな期待がちらりと見えた。種牡馬になるような馬なのでしょうか、という我々の質問に、平井さんはこう答えた。
「グランド牧場さんからは、セン馬にはしないでくれとの強いお願いでした。それが答えではないでしょうか
ディープインパクトの牝馬、そしてスズカマンボの牡馬。
その2頭の新馬が、世間を騒がせる2頭になる事を期待する。

フードゥルブラン

文・横山オウキ