馬産地・日高を諦めない!新冠町からいまスタートする、「サラブレッド野菜」とは?

「サラブレッドのふるさと」として競馬ファンに馴染み深い北海道・日高地方。

そんな日高地方の現実をあなたは知っているだろうか?


「日高の現実は厳しい」


そうはっきり口にするのは、日高・新冠町へ移住した若勢文太さんだ。
競馬が好きで、競馬のために何かしたい一心で新冠町へと移り住んだ。


「日高の馬が強くなれば、日本の競馬はさらに面白くなるのではないか」


その考えが間違いでないことを証明するために、競馬のために、若勢さんは今日も活動を続けている。

日高地方が馬産地として名を馳せるようになったのは、1960年代の競馬ブームがきっかけだった。

高度経済成長、レジャー・ブーム、そして三冠馬・シンザンの登場。
様々な要因が重なり巻き起こった競馬ブームは、日高地方の農業構造を激変させた。
それは、日高の農業粗生産額における軽種馬の割合をみても明らかだった。


1965年には約20%から、1970年には60%へ。


こうして日高地方は「サラブレッドのふるさと」と呼ばれるようになったのだ。


一時は生産過剰により産駒の生産調整も行われるほどの盛り上がりをみせていた日高の馬産であったが、その繁栄もそう長くは続かなかった。

バブル経済破綻による、景気の低迷。
そして、1992年から実施された輸入馬の出走制限緩和による、競走馬の輸入増加。
これらの影響で、日高地方の産駒は販売不振に陥る。以降、繁殖牝馬頭数と生産頭数は、年々減少している。


「これからのサラブレッド生産は今までのやり方では厳しい」
実際に移住し、その目で日高の現実を見ているからこそ、若勢さんの言葉には重みがある。


では、日高という馬産地を守るために、わたしたちはどうすればいいのだろうか?


そのカギとなる可能性を秘めているのが、若勢さんの提唱している「サラブレッド野菜」である。

 

サラブレッド野菜。


聞き慣れない単語だが、一体どんなものなのだろうか?


「サラブレッド野菜とは、サラブレッドのボロ(馬糞)を堆肥として育てた野菜のことです」
と説明するのは若勢さん。
その種類はピーマンやアスパラガス、トマトなど多岐にわたる。

サラブレッドのボロを堆肥としている野菜であれば、すべて「サラブレッド野菜」というわけだ。

時節にあった美味しい野菜が様々あるが、特に新冠のピーマン生産量は全道一を誇る。


「日高は野菜を育てるのに適した土壌がつくられています。野菜が元気に育ちますし、その程よい甘みは……初めて口にしたときは驚きで、本当に声をあげちゃうほどです!」
若勢さんも興奮気味に語る、サラブレッド野菜の美味しさの秘密とはなんだろうか。

サラブレッドは日々の訓練で体内の酵素を燃焼させている。そのため、腸内の微生物の働きが活発となっている。馬糞には多くの良質な微生物が含まれているのだ。


また、サラブレッドは堆肥を提供する他の動物同様に草食動物だが、牛と違って反芻行動を行わないため、牛糞堆肥より栄養を豊富に含んでいること。


──この2点より、サラブレッドの「ボロ」は堆肥としての高いポテンシャルを持っている。その堆肥を豊潤に使った畑では、美味しい野菜ができるというわけらしい。

若勢さんは現在「サラブレッド野菜」直売所のオープンに向けて、日夜駆け回っている。

毎週土曜日10時~12時までの2時間、道の駅で開催されている、にいかっぷ軽トラ市。
地元の人間はそこでしかサラブレッド野菜を購入することが出来ない。
実は新冠町にはスーパーがなく、野菜を買うには隣町まで車で15分かかるのだ。


「地元・新冠でも、美味しいサラブレッド野菜を買うことが出来るように」

 

そんなサラブレッド野菜のプロジェクトと、道の駅サラブレッドロード新冠の隣に作る集合型店舗開設のプロジェクト「新冠キッチン(仮)」が出会い、サラブレッド野菜のプロジェクトは具体性を帯びていく。


「新冠キッチン(仮)」は日高の野菜、魚、肉、パン&スイーツを楽しめるフードコートのような場所を目指している。

地元の人たちに受け入れられたサラブレッド野菜も、そこに共に出店したい、という運びとなったのだ。
話し合いを重ね、プロジェクトは順調に進んでいるように思えていた。


そんな明るい話題に満ちた、冬のある日、事件は起こった。


2018年はじめに降った大雪を覚えているだろうか。
日本各地で雪による被害が発生した、あの大雪だ。
北海道のなかでは滅多に大雪の降らない地域である日高地方も、大雪に見舞われた。
その時の一番の被害が、大雪でビニールハウスが潰れたことだった。
ビニールハウスの解体撤去には、多くのボランティアや町職員、農協職員、建設業界の方々が動いてくれたという。


しかし、野菜の生産農家は高齢化が進んでいて、壊れたビニールハウスはもう直さないと決めた人もいる。


今後の日高の農家やサラブレッド野菜のことを考えると、雪害のもたらした被害は大きい。

 


そんな日高を盛り上げるためにも。
農家のみなさんとまた一緒にサラブレッド野菜を販売するためにも。
なんとしてもサラブレッド野菜直売所を成功させたい。
──そのための支援を募っているのが、サラブレッド野菜のクラウドファンディングだ。

 

備品などは自前で揃えるつもりとのことだが、まだまだ金銭面で足りない部分がある。


クラウドファンディングは、そうした意味でもこのプロジェクトのカギを握っているのだという。


集まった資金の使用目的は、以下の通り。
集合店舗設営(リノベーション)費
陳列棚(木製ショーケース)
レジ
調理場設営費
共有部分(イートイン空間)設営費
サラブレッド野菜宅急便発送用段ボールのデザイン開発費
雪害見舞金(ビニールハウス補強費、耐雪研究費に使用)


支援者へのリターンとして、金額によってサラブレッド野菜や海産物をはじめとした、日高の名産品をおくる。

追加のリターン品もあるかもしれないので、こまめにチェックしていただけると嬉しい、との言葉もあった。

 

なぜ、この「サラブレッド野菜」が競馬と関係しているのだろうか?

なぜ、直売所が必要なのだろうか?


それは、サラブレッド野菜の盛り上がりが、馬産地・日高を支えていく地盤作りに繋がるからだ、と若勢さんは答える。

 

「直売所のオープンで町が活性化すれば、この街の暮らしやすさがアップします。居心地の良い街になることで、今元気のなくなっている街の人々も『まだ、ここで農業をやっていこう』『ここでサラブレッドの仕事を続けよう』と感じてくれるのではないかと思います。実際、今新冠に流れているのは、ちょっとした諦めムードです。私はなんとか、そこを変えていきたいんです」
そして、街の雰囲気が変わることの良い変化は、住む人にとどまらない。
「野菜を通じて都市部の競馬ファンとの交流人口が増えれば、日高に行きたいと感じてくれる方々が増えるんじゃないかとも考えています。街の雰囲気に活気が出てくることも、その後押しになるのではと思っています。さらに、馬産地に人とおカネがスムーズに流入していけば、引退馬や何らかの理由で現役を退いたジョッキーや競馬関係者が、生活の拠点として日高を選んでくれるのでは、とも考えています」

日高地方に蔓延している人手不足や財政難が解消に向かえば、馬産地としての活気を取り戻すことが出来る。
地元でサラブレッド野菜を販売出来れば、観光客の呼び込みにも繋がる。


その第一歩として、若勢さんは「サラブレッド野菜」の活動に取り組んでいるのだ。


また、「サラブレッド野菜」が挑むのは既存の野菜のカテゴリーを越えた存在への道。
「サラブレッド野菜」とすることで、野菜にメディアとしての機能を持たせたいという思いもあるという。
「将来的には、青森や茨城、栗東周辺、そして九州の農家さんと、サラブレッド野菜連合のようなものを」と、若勢さんは夢を語る。


まずは、新冠町に直売所を作る。
しかし、地元での販売だけがサラブレッド野菜の目標ではない。
新冠町に直売所が出来た後には、国内・海外へ向けたEC販売、直売所の東京支店・大阪支店の開設も計画されている。

 

──そして、サラブレッド野菜を、世界へ。


地方から全国、そして世界へ。まるで本当のサラブレッドの夢物語のようでもある。

日高を応援するためのサラブレッド野菜。

そのサラブレッド野菜を成功させるためには、ぜひクラウドファンディングへの支援をお願いしたいと若勢さんは言う。


日高と競馬ファンを繋ぐ。


「サラブレッド野菜」のクラウドファンディングはそのためにある。クラウドファンディングへの支援をすることで、わたしたちは日高を応援することが出来るのだ。
わたしたちが日頃競馬を楽しめているのは、馬産地があるからこそ。

その代表的な馬産地である日高のためにも、サラブレッド野菜を応援してみるのはいかがだろうか?


「日高の現状は厳しい。しかし、厳しいけれども、諦めないで欲しい!」
これは新冠町のみなさんに、若勢さんが日頃伝えていることだという。


そして、日高を諦めないのは、わたしたちも同じだ。


競馬を楽しませてくれている馬産地・日高への恩返し。


その第一歩として。
サラブレッド野菜を応援し、これからの動向にも注目していきたい。

サラブレッド野菜の支援はこちら

サラブレッド野菜公式HP

 

文・笠原小百合

写真・一般社団法人ナンモダ

 

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