サンレイデューク~駈け抜けた歴史、見届けた歴史~

幾多の名馬が障害コースを駈け抜けてゆく。
障害王者のバトンが、次世代へと託されてゆく──。

長年、障害競走の歴史を見続けた彼。
自身もまた、その障害界の中心として君臨し続けた。

 

2012年から2018年、6年に渡り障害界の第一線で活躍した名馬──彼の名は、サンレイデューク

時は遡り、2014年・東京ハイジャンプ。

中団を走る1頭の競走馬が、障害飛越のたびにポジションをあげてゆく。


そして鮮烈な末脚を発揮した彼はゴール前、1番人気のエーシンホワイティをクビ差捉えた。13番人気という評価を覆して。


その光景に、ファンは度肝を抜かれる。

障害重賞常連の好メンバーが揃った、ハイレベルなレースでの事であった。


それは「名障害馬・サンレイデューク」の名が広く知れ渡った瞬間であり、また障害競走で厚い信頼を集める難波剛健騎手の、デビュー14年目での重賞初勝利であった。


こうして華々しく障害重賞・初制覇を果たした人馬は、第一線で注目を集める事となる。

 


続く2014年・中山大障害。

サンレイデュークは前走の実績を買われ、3番人気に推された。サンレイデュークにとってこれは、2013年・中山大障害、そして2014年・中山グランドジャンプに続く3度目のJ-G1挑戦であった。

そしてついに彼は、レッドキングダムの3着という健闘を見せたのだ。

 

サンレイデュークは、レッドキングダムとアポロマーベリックの激戦を……障害王者のバトンというものの何たるかを知っている。


先述の通り、彼は2013年・中山大障害、そして2014年・中山グランドジャンプにも出走していた。

ゆえに彼は、アポロマーベリックの独走劇も知っている。


混線の障害界を切り裂いた、大障害コースの華の輝きを。

 


第一線で活躍した名馬・サンレイデュークは同時に、障害競走の歴史の証人でもあった。常に全身全霊を懸けた走りをもって。その説得力は、いかなる言葉にも勝るものではなかろうか。

2014年を飛躍の1年としたサンレイデュークの2015年緒戦は、阪神スプリングジャンプであった。伏兵はいつしか、中心の1頭として障害コースを駈ける事となった。


彼はその武器である末脚を発揮し、ゴール前サンライズロイヤルをハナ差差し切り、ファンを沸かせた。
ハラハラする、しかし惹き付けられる、その末脚。障害飛越のたびに前を行く馬群との差を詰める、飛越の上手さ──。
そしてサンレイデュークは、4度目のJ-G1である2015年・中山グランドジャンプを3番人気で迎える事となった。結果はアップトゥデイトの3着。


このレースは、15頭中5頭が競走中止というものであった。長年障害界に身を置いていると、そうした障害レースの厳しさも目の当たりにする事があるものだ。


障害転向から3年。

障害競走の何たるかを見てきた彼……「中山向き」と難波騎手に幾度となく言われた彼は、いつの日か、障害競走に携わる人馬の憧れであるJ-G1タイトルを手にする日が来る事だろう──彼のファンは、堅い絆で結ばれた人馬に、そうした期待をかけた。


しかしそんな彼に、突如として試練が訪れた。

2015年・東京ハイジャンプ後の屈腱炎である。

休養、リハビリ……華やかな舞台から姿を消したサンレイデュークの、自分自身との闘いが始まった。


サンレイデュークが復帰を果たしたのは、2016年・東京ハイジャンプであった。


「お帰り!」

「待ってたよ!」


東京競馬場のパドックで、そんな声が飛び交う。


「無事に」


それが、屈腱炎からの復活を果たした彼へのファンの一番の願いであった。

だが、自分自身との闘いに勝ったサンレイデュークは、ターフでの勝利をも諦めていなかったのである。

2017年・中山グランドジャンプ。


いつものように中団からレースを進めた彼は「あわや」の走りを見せた。直線を向いて、オジュウチョウサンとの差は4馬身。サンレイデュークに、かつての末脚が確かに蘇っていた。


「差せ!」


屈腱炎を乗り越えて。

あの王者・オジュウチョウサンに最後まで食らいつき、同じく王者であるアップトゥデイトを8馬身千切って。


サンレイデュークは、J-G1での自己最高着順である2着を手にしたのだ。

それから1年が経ち、2018年4月。


彼は、2018年・中山グランドジャンプを最後に競走馬を引退する事となった。


「長い間、障害界を盛り上げてくれてありがとう」


歴史を見届けたベテランは、ファンに暖かく見送られて第二の馬生へと向かった。今後は馬事公苑にて乗馬となる。


6年もの間、障害界の第一線で活躍し続けた名馬・サンレイデューク。


彼に声援を送るファンは、同時に、ターフを去った障害馬たちに……彼らの手に汗握る名勝負に、思いを馳せる。
彼は、障害競走の歴史の架け橋という偉業も成し遂げたのだ。

 


そしてサンレイデュークはこれからも、障害ファンにとっての、いや、競馬ファンのみならず乗馬・馬術愛好者をも惹き付ける存在となる事だろう……そんな予感に期待が弾む。


そしてその名を、その姿を目にした時は、再び声援を送りたい。

駈け抜けた歴史がある。

 


見届けた歴史がある。

 


沢山のファンから向けられた餞の言葉と共に第二の馬生を歩む彼の、更なる飛躍を願ってやまない。

文・川井旭

写真・ryon