僕たちの『HOT HOLIDAYS!』

「うわ~人がいっぱいだね~!!」

「このころから競馬ってあったんだ~」

「え~!?ジョッキーってこんなに体重軽いの!?」

 


こんな驚きの声が私の周りにあふれたのは、2018年5月6日の事です。

NHKマイルカップ開催当日の東京競馬場。

私にとって忘れられない1日となりました。

現在大学生の私は「一橋乗馬&競馬サークルPacara!」というサークルの代表をしています。サークル活動の中心は大自然の中で馬に乗る『外乗』ですが、サークル名に競馬と付くこともあり、そして何より私自身競馬が好きということもあり、有志で競馬観戦することが多くあります。

この時期の大学は、新歓シーズンです。そこで私たちは東京競馬場にて新歓競馬観戦をすることになりました。

今回はそんな新歓中の競馬サークルの一日を記事にしたので、よかったらお付き合いください。

 


Twitterなどで新入生を募集した結果、結構な数の方が来てくれることになりました。そのことで私はワクワク、ドキドキが止まらなくなり、まさにJRAのCMソングの「指折り数え待ちに待った HOLIDAYS」といった状態でした。

そんな待ちに待ったゴールデンウィーク最終日、5月6日。忘れられない1日が始まります。

 

私は早くに来て誘導馬とふれあったり、今日はどこに行こうかと考えたり、そしてもう一度誘導馬とふれあったり……(笑)

そんなこんなで、あっという間に集合時間がやってきます。集合場所は、競馬場の西門前。そこにはキラキラと目を輝かせた新入生たちがいました。聞いてみると、ほとんどの方が初めて競馬場に足を運んだとのこと!!競馬好きが多いのかなと思っていた分、正直意外でした。

 


「テレビでやっているレースや競馬場の雰囲気を見て一回行ってみたいと思って」

「乗馬したことがあったので、いい機会だし馬を見てみたくて」

 


とのこと。嬉しい気持ちと同時に、俄然やる気が漲ります。

少々掛かり気味に、まずはフジビュースタンドへ。馬のオブジェなどの写真を撮りながら来場ポイントキャンペーンに向かいます。意気揚々とSuicaをかざす私たち。しかし、その気合もむなしく残念ながら全員はずれ。「後2回来れば必ず景品がもらえるよ!」などとさらなる来訪を要請しながら、宮殿のような館内を歩き回ります。

回りながら「競馬場ってどう?思ってたよりきれい?」と新入生に聞く私。すると、「う~ん、でも今ってCMでやってますよね。あまりイメージと違わないです」と少々意外なコメントが返ってきました。なるほど、CMか──そのおかげで今の若い世代は競馬場=汚い、というイメージを、前ほど持っていないのかもしれないなと思いました。

松坂桃李さん、柳楽優弥さん、高畑充希さん、土屋太鳳さんがイメージキャラクターの2018年度のJRAコマーシャルは、まさに競馬初心者の若者を題材としています。実は私も、今回の新歓競馬をこのCMのコンセプトに則った、つまり「競馬(場)にはいろいろな楽しみ方がある」ことを伝えられるようプランを立てていました。

私は「競馬場は馬を題材とした総合アミューズメントパーク」であると考えています。初めて来た人が競馬を、そして馬を好きになって帰ってくれればいいなあと、切に願っています。

などと競馬について思いを馳せていると、いつの間にか風が私たちの体に吹きつけていました。親子馬像を通り過ぎ、屋台の横を通り過ぎると、次なる目的地の競馬博物館に到達しました。

 

競馬博物館は東京競馬場内にある施設です。

競馬のことはもちろん、馬そのものについても様々なことを知ることができ、さらには体験型アトラクションも多いという、東京競馬場でも人気の施設です。

2018年4月にリニューアルされ、なりきりジョッキーやライブシアターなど新しくできたアトラクションもありました。

到着した私たちはまず、その『なりきりジョッキー』で遊びました。顔写真を撮り、その顔をしたジョッキーが画面上で競馬をするという演出です。実際見ると、なかなかシュールです(笑)しかも結果は2着……負けることもあるんだと驚きました。

「きっと顔の気迫が足りなかったんだよ~」などと冗談を言いながら、続いては隣のライブシアターへ。ここは大型4面スクリーンと5.1chサラウンドで迫力ある映像・音声を体感できる劇場型アトラクションです。内容は、馬の生誕から放牧の様子、鞍をつけて歩く練習、速歩や駈歩の練習、調教などを経てついに競馬場へ……といったもの。そして、競馬の祭典日本ダービーの様子が映し出されます。

競馬場を走る一頭一頭のサラブレッドに、多くの人の苦労や工夫、そして愛情が詰め込まれているんだなあと感動していました。

続いては2階の展示室へ。こちらも新しくできたフォトスポットで、写真をパシャリ。

近くにはディープインパクトの彫刻があり、そこにはちょうどその前日の深夜に英・2000ギニーを勝ったサクソンウォリアーの説明もありました。仕事が早いなあ、と思いつつ、この出来事の功績を、新入生にも簡潔に伝えました。

そして競馬の歴史を見て回ります。古代ギリシャからあったという競馬。

「このころから競馬ってあったんだ!」と、新入生もしきりに感心していました。イギリスやアメリカなど各国の競馬史、そして日本での発展。ついついあれもこれも、と説明してしまいます。イギリスや日本の競馬場の様子を表現したジオラマには食い入るように見つめていました。

ようやく競馬史のエリアを抜けるとそこにはスターターと発馬機が!

みんな、とても楽しそうでした。当然のように各自が体験し、写真を撮ってから次のエリアへ。そこでは馬の生態や先ほどライブシアターで見たように、馬が競走馬になるまでの様子などが説明されていました。冒頭でま述べたように、私たちのサークルは乗馬もするため、普段の乗馬会に絡めて馬の説明しました。新入生も馬という動物について興味津々といった様子でした。

ゴール板や、東京競馬場に関する歴史を知ることのできる東京競馬場歴史絵巻も楽しみました。

後で気づきましたが、これだと逆走してますね……(笑)

検量台では「え~!?ジョッキーってこんなに体重軽いの!?」と驚く声も。

期間限定の英国ダービー展は新入生にはなかなか難しかったようですが、それでも競馬の歴史の長さや紳士のスポーツとして発展してきたことを知って感心していたようでした。個人的にはエリザベス女王と皇太子時代の今上天皇が競馬を見る様子を写した2ショットがなかなかインパクトがあって、忘れられません。

ようやく2階を回り終えた我々は、1階へと戻ります。期間限定の小岩井農場展では、小岩井農場が輸入した牝馬の牝系から生まれ、先日惜しまれつつ亡くなったスペシャルウィークの説明もありました。

そしてその先には顕彰馬が説明されている競馬の殿堂が。レコードが出るほど人気があったハイセイコーという馬がいたこと、14億をレースで稼いだ後に子供をたくさん輩出することでそれをはるかに超える額を稼いでいるディープインパクトという馬がいること、牝馬で日本ダービーを勝ったウオッカという馬がいること……その凄さを、なんとなく感じてもらえたようでした。

そんなこんなでようやく競馬博物館を回り終えました。本当は1時間くらいで回るつもりが、結局2時間以上滞在していたようでした。ついつい説明に熱が入ってしまうんですよね……。

そうしてるうちに13時を過ぎ、大分おなかも空いてきたのでそろそろご飯を、ということに。地下道を通って内馬場へ向かいます。地下道の壁面には馬のかわいらしいイラストが。ついつい立ち止まって説明を読んだり写真を撮ったりする新入生がいたので、私もついつい写真をパシャリ。

地下道を抜けるとそこにはメガグルメフェスの文字が!

この日は『旨カラフェス』と題して、日本各地から集まったからあげ店が軒を連ねていました。私は温玉黒だれ丼をチョイス。カラッと揚がったアツアツのからあげが、コクのある黒だれとトロットロの温玉と絡まり絶妙なハーモニーを奏でます!!とてもおいしかったです。

新入生はからあげ入りカレーを食べる人、油淋鶏を食べる人、いちごクレープを食べる人など、思い思いにお昼ごはん(?)を満喫していました。

地下道の帰りも馬のかわいらしいイラストを見つつスタンドへ戻ります。時刻は14時を過ぎ、人も多くなってきました。本当は馬と触れ合える乗馬センターに行こうと思っていましたが、せっかく競馬場に来たのでそろそろ競馬を見てみたいという新入生の声もあり、パドック→競馬観戦する流れに。競馬博物館でしゃべりすぎてなければ乗馬センターに行けたかもしれなかったなあ……と若干の後悔をしつつ、しかし気持ちを切り替えてパドックへ向かいます。

 


東京10R・ブリリアントステークス。パドックにはもうすでに多くの人が詰めかけていました。「パドックの見方」という説明書きがあるところからパドックを見ようと思ったものの、残念ながら説明書きが人の影に隠れていました。イメージは以下のものです。

(画像は別日に撮影したものです)

仕方なく隙間から馬を覗きながら、新入生にパドックの見方を口で説明します。「あれはブリンカーと言って、レースに集中させたいときに使うんだよ」「あの白いのは汗で普通はあんまりよくないんだよね」「あの馬は外のほうを回っていて気合が入ってる証拠かもね」「あれは昔の野球選手の持ち馬だから厩務員さんがユニフォームを着てるんだよ」などなど。

馬を見ているうちに「かわいい……」と口から声を漏らす新入生もいて、心の中で「分かる、分かるぞその気持ち!!」と激しく同意していました。私も1人で来ているときは、かわいいと思った馬に合わせて首を上下させたり、顔を真似したりする習性の持ち主です。落ち着いて馬を至近距離で見られるパドックは、まさに心休まる憩いの場……。

しかし、そんな憩いの時間は永遠には続きません。私たちは馬たちにしばしの別れを告げ、いよいよ本命馬を決めます。新入生はほとんどが未成年のため、馬券予想は私を含めた成人メンバーのみとなります。

ただし、パドックで何人もの新入生が名を挙げた良いデキの馬が一頭いました。4番フェニックスマーク。私もパドックのころから確かにいいなあと思っていました。調べてみると3番人気で単勝7.0倍、そのとき3連勝中の馬でした。これなら、と思い私は単勝100円を買いました。みんなとパドックを見て決めた馬です、金額は問題ではありません。人の波をかき分けいざスタンドへ。

スタンドでは「競馬の見方」講座が始まりました。「ダート2100mだからあれがさっき競馬博物館で見たゲートで、一周してあそこがゴールだよ」「フェニックスマークは黒い帽子で前目にいるはずだからそれを見るんだよ」と教えます。「4番~!4行け~!!」「フェニックス!フェニックス!」「ジョッキーが北村さんだから『北村~!!』って思いっきり叫ぶんだよ」などと叫び方もレクチャーします。恥ずかしがりながらもマネしてくれる新入生、かなりやさしいです。

私は右手にムチ──新聞を丸めたお手製のもの──を握りしめ、準備完了。

そうしているうちにファンファーレが鳴り渡り、一頭また一頭とゲートに収まります。緊張感が高まります。態勢完了。スタート。

スタートを決めるフェニックスマーク。二の足も付き先行します。少しかかりながらも好位を追走して向こう正面を走り、他の人気馬は後ろ目で待機。これは、いい流れです。

と、そこでリーゼントロック──パドックで見た昔の野球選手の持ち馬──が捲って先頭集団へ取り付く。3コーナーから4コーナー、少し頭を挙げながら4頭並ぶ先頭集団の一角を形成するフェニックスマーク。

そして、さあ直線。

内ラチ沿い粘るリーゼントロックを200m手前でわずかに交わします。外にいた馬も交わしわずかに先頭に躍り出ます。他の人気馬は来ないようです。「北村!」と私は叫びながら右ムチを一発、二発。隣の新入生も「4いい!4いい!」と思わず口にします。内ラチ沿いから差し馬が迫ってくる。残り100m、差は半馬身ほど。私は「4、4……」と祈りながら風車のようにムチを打ちます。「4来た!4来た!」と新入生の声が聞こえます。もう一度伸びて内の差し馬を突き放しますが、外からも差し馬が飛んできて……しかし、届きません!「4番フェニックスマークゴールイン!!」。

「おおおおお!!!」と私たちは歓喜の声を上げました。みんな思い思いにガッツポーズして立ち上がります。そしてみんなと笑顔でハイタッチをしました。「やった!やったよ!」「4番強かったね~!」と喜びの声が次々と発せられます。みんなも同じく、感動したようです。

この嬉しいという気持ちを共有することこそ、スポーツを見ることの醍醐味かもしれません。サッカーや野球などをスタジアムで観戦していて、応援するチームが点を取った時と同じような盛り上がり方でした。

私は、競馬の楽しみ方を逆に新入生に教えてもらった気がします。好きな馬を応援する。そして勝ったら応援していたみんなで喜び合う。ギャンブルとしての枠組みを超えたスポーツとしての競馬の楽しみ方。最初に競馬を見たときに感じた楽しさや嬉しさも、もしかしたらこういうものだったのかもしれません。

(余談ですがフェニックスマークくんがくれた700円はその後のアフターで行ったイタリアン料理に使いみんなに還元しました。よりおいしく感じた気がします)

続くGⅠ・NHKマイルカップ。「うわ~人がいっぱいだね~!!」と驚く新入生。「そうだね、でも日本ダービーはこの倍は入るんだよ!」と教えるとさらに驚いていました。

競馬がこれだけ多くの人から愛されるのは、まずスポーツとして観戦すること自体が面白いからだと思っています。

今回よく見えたのは1番人気のタワーオブロンドン。これを買って応援します。モニターにはGⅠ前の特別ビデオ、カウントダウン、いよいよスターターが上がりファンファーレ。写真を撮る人、手拍子をする人、掛け声(?)を叫ぶ人。NHK交響楽団の素晴らしい演奏でした。「すげえ……」とあっけにとられる新入生。

ゲートイン、一頭、また一頭と収まりスタート……残念ながら、私たちの予想ははずれました。勝ったのはケイアイノーテック。鞍上の藤岡佑介騎手はこれがGⅠ初勝利でした。「藤岡おめでと~!」と私が叫ぶと新入生は拍手を送ります。予想が外れても勝者を讃える、これまた素晴らしい文化です。

こうして長い1日が終わりました。歩き続けた疲れもありましたが、それ以上に充実感がありました。新入生も楽しんでくれたみたいで「次のGⅠっていつありますか?」と聞いてくれた方もいました。「来週あるよ。東京競馬場は今GⅠシーズンだから5週連続でGⅠがあるんだよ~」と答えると、驚きながらどれか行こう、という嬉しい返答も。

一人でも多くの人に競馬と馬の魅力を知ってもらいたい、そして競馬場に来てもらいたいと思っている私は、その言葉を聞いてとても嬉しく思いました。ここだけの話、目頭が熱くなりました。

 


今回の新歓競馬観戦は、予定通りではなかったことはありましたが、それでも充実した観戦になったのかなと思います。

新入生は今まで知らなかったことがたくさんあって、驚くことも多かったと思います。

いろいろな「気づき」があったと思います。一番あってほしい「気づき」は「競馬(場)って楽しい!」ということですね。友達などを連れて、ぜひまた競馬場に来てほしいですね。

そして私自身も、多くの「気づき」がありました。新入生はこんなところに興味を持つんだ、と本当に驚くことがたくさんありました。でも、1番の「気づき」は「競馬ってこんなに楽しいんだ」と改めて感じたということでした。初心にかえって楽しむことができました。本当に忘れられない1日になりました。これは新入生のおかげだと思います。

ありがとう、新入生。

 

今後は競馬(場)の「新入生」をもっともっと増やせるように、一人でも多くの人に競馬の魅力を伝えていけたらいいなあと思っています。競馬場はHOTなHOLIDAYSを過ごせる素晴らしい場所であることを伝えていきたいと改めて思いました。

そのためにできることを一つずつやっていけたらと思っています。

初心を忘れずに。

 

当サークルに興味を持っていただいた方はtwitterも見てくれると嬉しいです!新入生募集中です!他大の方も大歓迎です!

Twitter:@hit_umaski

文と写真・一橋乗馬&競馬サークル Pacara!