ハナ差、同着、横一線。語り継ぎたい大接戦のオークス!

大接戦のオークス──その言葉で、あなたはどのオークスを思い浮かべますか?

怒涛の追込みからのハナ差決着。

長い写真判定の末の同着。

5着までが横一列でのゴールイン……。

誰もが勝利を確信する圧勝劇も気持ちが良いものですが、手に汗握る大接戦のゴール前はまた違った熱狂があるかと思います。

オークスという一世一代の大舞台で繰り広げられた、乙女たちの大接戦。

ここでは過去のオークスの中から3レースをピックアップしました。

今一度、そのゴール前の激戦を振り返ってみましょう。

2009年:ブエナビスタ×レッドディザイア

2歳女王となり、さらに牝馬クラシック第一冠である桜花賞も制したブエナビスタ。

迎えたオークスは、もちろん圧倒的1番人気でした。

ワイドサファイアが本馬場入場後に放馬したことで競走除外となり、どことなくざわついた雰囲気の東京競馬場。

それでもファンファーレが響き渡れば、もう各馬を応援する他ありません。

ブエナビスタが二冠目の称号を得るのか、それとも──。

スタートが切られると、ヴィーヴァヴォドカが逃げ、レースを引っ張ります。

ぽつんと2番手にデリキットピース。

3番手以下は一団となって、やや縦長の展開です。

スタートのあまり良くなかったブエナビスタ。後ろから2、3番手を進みます。

 

最後の直線へ向き、残り200メートル手前。

桜花賞でブエナビスタの前に2着となっていたレッドディザイアが馬群の間から抜け出します。

 

今度こそ、勝てる。

 

しかし、そんなレッドディザイアをめがけ、猛追をみせる馬が1頭。

女王の座は譲れないとばかりに後ろからやって来たのは、ブエナビスタでした。

直線入り口では後方にいたブエナビスタは、驚異的な末脚で前にいた馬たちを抜き去り、そのままの勢いでゴール板を駆け抜けました。

レッドディザイアをハナ差だけ、交わして。

2歳女王は、桜の勝利を経て、樫の女王へと輝いたのです。

ブエナビスタとレッドディザイアとの大接戦は、秋華賞でもみせてくれましたね。

結果、ブエナビスタは牝馬三冠達成とはなりませんでしたが、レッドディザイアとのライバル対決は2009年の牝馬クラシックを大いに盛り上げてくれました。

その後もジャパンカップや天皇賞(秋)を勝利するなど、牡馬相手にも活躍をみせたブエナビスタ。

間違いなく、名牝の1頭と言えるでしょう。

2010年:アパパネ×サンテミリオン

雨の降り続く東京競馬場で行われた第71回優駿牝馬は、JRAのGⅠでは史上初となる1着同着──オークス馬が1日で2頭誕生する結末となりました。

1頭は、阪神ジュベナイルフィリーズ・桜花賞を勝利し、オークス勝利で牝馬クラシック二冠達成となったアパパネ。

もう1頭は、サンテミリオン。

フローラSからの参戦で、桜花賞組を破ってのGⅠ勝利でした。

鞍上の横山典弘騎手はヴィクトリアマイルに続く2週連続GⅠ勝利となりました。

 

レースはハナを切ったニーマルオトメ、その後ろにアグネスワルツが続き、3番手以降は離れて、ショウリュウムーンを筆頭にひとかたまりに。

アパパネとサンテミリオンは中団やや後方からの競馬を選択しました。

4コーナーを回りながらアグネスワルツが一足先に抜け出ると、それを捕らえる勢いでアパパネとサンテミリオンが2頭並んで追いかけます。

そして残り200メートルを過ぎる頃には、アパパネ、サンテミリオンの一騎打ちに。

 

二冠のかかったアパパネ。

桜花賞組逆転を狙うサンテミリオン

 

意地と意地とのぶつかり合いです。

激しい叩き合いは続き、その真剣さは見るものを圧倒しました。

アパパネか。サンテミリオンか。

2頭の熱い吐息が見えそうなほどに、誰もが凝視するゴール前。

しかし、アパパネもサンテミリオンも、一歩も譲らず。

鼻面を全く揃えてのゴールインとなりました。

長い長い写真判定の末、電光掲示板に灯った「同着」の文字は、雨の中でもくっきりと光り輝いて見えました。

その結果に、驚きを隠せなかった競馬ファンも多かったことでしょう。

しかし、讃え合う蛯名正義騎手と横山典弘騎手の姿を見て、素直に「よかった」という思いに変わったのではないかと思います。

喜び合う2人の騎手、力を出し切った2頭の馬。

その頭上からは、あたたかな祝福の雨が、降り続きました。

1983年:ダイナカール×タイアオバ×メジロハイネ×ジョーキジルクム×レインボーピット

オークスというテーマでなくとも、大接戦について語るのであればこのレースを挙げる人は、昔からの競馬ファンだと多いのではないでしょうか。

 

わたしは当時生まれていなかったので、ずっと後になってからレース映像を確認しましたが、ゴール前は思わず「すごい!」と声を出して見入ってしまいました。

それくらい、印象的な結末でした。

 

1983年、樫の女王の座をかけての一戦は混戦必至の28頭立て。

ダイナカールは2番人気で、1番人気のダスゲニーと共に今はなき単枠指定(特に人気が集中しそうな馬を1枠1頭に指定する制度)でした。

 

レースはビクトリジョオーが勢いよく先頭にち、軽快に逃げてハイペースの競馬に。

3コーナーではマチカネオトメが競走中止のアクシデントにも見舞われてしまいます。

4コーナーから最後の直線に入ると、まず抜け出したのはメジロハイネ。

しかし、そうはさせまいとダイナカールも続いていきます。

残り200メートル付近でメジロハイネとダイナカールが並び、この2頭の叩き合いになる、と思いきや。

そこへさらにタイアオバ、レインボーピット、ジョーキジルクムも加わって、5頭がひしめき合います。

どの馬が前へ出るのか、誰もが息を呑んで各馬の鼻先に注目します。

 

しかし誰かが抜け出すことはなく、まるで何者かの手によって線を引かれているのかのように、横一線となったところでゴールイン。

掲示板に表示された着差はすべて「写真」で、長い写真判定の結果、勝ち馬はダイナカールとなりました。

 

5着までの着差は「ハナ、アタマ、ハナ、アタマ」。

 

5頭までが同タイムでのゴールインはまさに大接戦。

ダイナカールは、そんな大混戦のゴール前をハナ差で制した、ど根性ガールでした。

その血は、娘であり、オークス母子制覇を達成したエアグルーヴにも受け継がれていたように思います。


オークスという一生に一度の大舞台でみせる、乙女たちの大接戦。

激しいゴール前は、彼女たちの生き様そのもののようにも感じます。

 

次は、どんなオークスが待ち受けているのでしょうか。

 

清々しいまでの圧勝劇か、手に汗握る大接戦か。

少女たちの正々堂々勝負から、これからも目が離せません。

文・笠原小百合

写真・がんぐろちゃん

 

関連ページ

史上3頭目の牝馬三冠馬アパパネ~次の夢へ〜

レーティングからみたオークス