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[重賞回顧]第57回愛知杯(GⅢ)~ベテラン健在 in 小倉~

 

土曜日唯一の重賞競走ということもあってか、ローカルの小倉競馬場にトップジョッキーが集った。

 

中でもセンテリュオに騎乗するルメール騎手は、2015年9月の小倉2歳ステークス以来4年半ぶりの小倉競馬場での騎乗となった。他にも武豊騎手、川田騎手、池添騎手など重賞競走にふさわしい騎手が揃って小倉にやってきた。

 

しかしこの愛知杯というレースは、いわゆる『荒れるレース』として知られている。

現在の1月開催になってから過去5年間、2016年以外は1番人気の馬は3着以内に入っている一方で、2番人気・3番人気の馬は4着以下に敗れている。それにかわり、6~10番人気の伏兵たちが波乱を演出しているのだ。

 

今年の1番人気はエリザベス女王杯4着のセンテリュオ。2番人気はG3紫苑ステークスを制したパッシングスルー。そして3番人気にエリザベス女王杯6着のサラキアが続いた。

 

 

■レース概況

 

ゲートが開くと、2連勝中のモルフェオルフェが先頭を主張。2番手にはリリックドラマ、3番手にランドネが続く。好位の後ろにサラキアとパッシングスルー。その後方にはアルメリアブルームが続き、センテリュオは最後方に控え、1コーナーを回る。

 

1コーナーまで約492mある小倉芝2000mのコース。すんなりと隊列が決まり、モルフェオルフェが2馬身差のリードを付けて逃げる形で落ち着く。

2番手にはリリックドラマ、3番手にはランドネ。その後にアロハリリーとサヴォワールエメとサラキアがポジションを取り、インコースにはレイホ―ロマンスが続く。

その直後にはパッシングスルーやアルメリアブルームとフェアリーポルカ。さらにすぐ後ろにはデンコウアンジュがインコースを追走する。センテリュオは後方から3番手の競馬を選択。

 

前半1000mのタイムが60秒1。

重馬場にしてはやや速い流れでレースが進む。勝負どころの第3コーナー、後方にいたセンテリュオがポジショニングを上げにいく。

先行集団でもパッシングスルーが徐々に加速していた。サラキアも川田騎手の手綱が早くも動き出すなど、有力馬の中にも動きが出てきた。

 

最後の直線でモルフェオルフェが失速。

代わってレイホ―ロマンスが先頭に立つ。外に出したセンテリュオが上がっていこうとするが、馬群を捌くのに苦労する。その前を走るアルメリアブルームとフェアリーポルカが伸びてくる。

 

残り200m。

レイホ―ロマンスが依然先頭。酒井騎手の右鞭がうなる。しかし、徐々に外によれてしまう。レイホ―ロマンスが作ったスペースを突いてきたのがデンコウアンジュ。

内デンコウアンジュ、真ん中レイホ―ロマンス、外アルメリアブルームのデッドヒートとなった。

 

そして、ゴール手前。

レイホ―ロマンスの脚色が鈍くなり、残るは赤い帽子の2頭に絞られた。

脚色は外アルメリアブルームが優勢だが、内を突いたデンコウアンジュもしぶとく伸びる。

最後はデンコウアンジュがクビ差でアルメリアブルームを抑え、ゴールイン。

タイムは2分1秒1。

3着にはレイホ―ロマンス、4着にはフェアリーポルカが続いた。

人気を集めていたセンテリュオは5着、パッシングスルーは7着、サラキアは9着に終わった。

 

3連単の配当は598,880円と、今年も波乱に終わった。

 

 

 

■各馬短評

 

1着 デンコウアンジュ(9番人気)

 

去年の福島牝馬ステークス(G3)以来の勝利。その後は苦戦していたが、前走ターコイズステークス(G3)では6着に敗れながらもラスト600mが34秒4。メンバー中2番目のタイムで、当時6歳とメンバー最年長でも、衰えは感じられなかった。

 

9番人気という評価は、56㎏というトップハンデが敬遠されたというのもあるだろう。しかし今回は、ラスト600mのタイムがメンバー中1番速い36秒1を記録した。

 

血統を見ると、父がメイショウサムソン、母の父が凱旋門賞馬マリエンバードとパワーを要する重馬場には合う。また、最近の戦績を見ると、4つコーナーを回るレースの方が得意のようだ。

それを考えると、芝1800mの福島牝馬ステークスの連覇はもちろん、同じ芝1800mのクイーンステークスでの善戦も期待される。

 

 

2着 アルメリアブルーム(5番人気)

 

前走のエリザベス女王杯では8着だったが、ラスト600mのタイムが33秒3とメンバー中3位のタイムを出すなど、充実期に入っている。今回もメンバー中2番目の36秒4をマークした。

 

今回は勝ったデンコウアンジュの切れ味に屈した形になったが、この馬も鋭く伸びている。

父ドリームジャーニーに母の父がネオユニヴァースと、器用さが求められる小倉コースに合っていたかも知れない。

 

サンデーレーシング所属の6歳牝馬なので、このまま引退若しくは次走がラストランになるかもしれない。

次走が中山牝馬ステークスであれば、ドラマチックなエンディングが待っている可能性は充分にある。

 

 

3着 レイホ―ロマンス(11番人気)

 

ここ最近は3000m以上のレースを走るなど、試行錯誤が感じられるレース選びが続いていた。ただ、2年前のこのレースでは2着に好走した馬。距離は2000mの方がベストなのだろう。

 

また、後方でレースを進めることが多いこの馬を、あえて中団でレースを進めた酒井騎手の好騎乗も光る。力の要る馬場の中距離戦であれば、7歳牝馬でも侮れない。

 

 

4着 フェアリーポルカ(6番人気)

 

父がルーラーシップ、母の父がアグネスタキオンと重馬場が得意な血統。

直線では一瞬抜け出したかに思える脚色だったが、最後は鈍ってしまった。

 

終わってみれば、5着以内に入った5頭のうち4頭が5,6,3,2番枠からのスタートで14番枠スタートのこの馬だけが4着と健闘している。

もう少し内枠に入っていれば、勝っていたかも知れない。

 

 

5着 センテリュオ(1番人気)

 

これまでのレースを振り返ると、中団もしくは先行する競馬を得意としていた。しかし、1コーナーを回る際には最後方に置かれるなど、いつものレースぶりではなかったように見受けられる。

 

最後の直線で外に出したものの、ラスト100m辺りで止まってしまった。重馬場が影響したと見るのが無難か。良馬場で再度見直したい。

 

 

7着 パッシングスルー(2番人気)

 

プラス14㎏と体重が増えていたが、成長分とみていいだろう。手応え十分で3コーナーを回っていたが、4コーナーで池添騎手の手綱が動いていた辺り、重馬場が堪えたかも知れない。こちらも良馬場で再度見直したい。

 

 

9着 サラキア(3番人気)

 

稍重馬場で行われた昨年のエプソムカップ(G3)で2着に入り、重馬場の適性が高いと思われた。しかし、あの時は前半1000mが63秒9の超スローペースを逃げて2着に入ったように、いつもとは違う競馬だった。本来は中団で折り合って瞬発力を活かす競馬が合うはずで、そうした意味ではパッシングスルー同様、重馬場が影響したのかもしれない。

 

 

■総評

 

重馬場の小倉競馬で行われた今年の愛知杯。

切れを持ち味とするディープインパクト産駒センテリュオ、サラキアが敗退。一方で重馬場得意のメイショウサムソン産駒のデンコウアンジュ、ハービンジャー産駒のレイホ―ロマンスが上位に来るなど、重馬場の適性が問われたレースとなった。

 

また、この日の小倉競馬の芝レース(7つ)で、10番枠以降の馬番に入った馬で馬券に絡んできたのが4頭のみと、内枠有利な馬場でもあったのは覚えておきたい。

昨年9月以来の開催後、芝の3コーナーを中心に芝張替えを実施した事も影響しているのだろう。

 

牝馬限定重賞はハンデ戦が多いが、今回は特殊な馬場であった事を念頭に置き、次の中山牝馬ステークスは今回敗れた馬達の逆転も十分あることは頭に入れておきたい。

 

また、柴田善臣騎手は今回の愛知杯の勝利で、9つのJRA競馬場での重賞競走を制覇。残すは函館競馬場のみとなっている。

2020年は東京五輪の影響で北海道開催が変則開催となり、クイーンステークスが函館競馬場で行われる。

果たして、デンコウアンジュと共にクイーンステークスに出走するのか?そして大記録達成はあるのか?

 

夏競馬の楽しみが、また増えたレースとなった。

 

文・おかのひろのぶ

写真・ペヤング

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