海外競馬紹介~多彩な魅力に溢れたフランス競馬~

エルコンドルパサー、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル……数々の名馬が挑戦するも、悲願にあと一歩届かず涙を呑んできた世界最高峰の舞台「凱旋門賞」。

日本馬にとって高き壁となっている凱旋門賞が行われるのは、イギリスと並んで欧州の競馬大国に位置するフランスです。

今回は、海外競馬を楽しむ際に役立つかもしれない「フランス競馬」の基本や情報を紹介します。

■そもそも「フランス」とは?

正式名称はフランス共和国。海外領土を複数持ちますが、本土はヨーロッパの西側に広がっています。

本土の面積は日本全土を上回るほど広く、農業大国と呼ばれるほど農業が盛んな国家でもあります。

観光名所の保有数も世界屈指であり、凱旋門やルーブル美術館などがあるパリは特に多くの日本人観光客が訪れます。また、南フランスの高級リゾート地は避暑地として有名で、夏にはバカンスを楽しむ観光客で賑わいます。

 

フランスで現代競馬が最初に開催されたのは18世紀。イギリスの競馬を参考にして行われました。

1834年にシャンティイ競馬場がオープンすると徐々にビッグレースも増えて、盛り上がりを見せ始めます。

戦争で何度か中断された期間はありましたが、長い歴史を持つヨーロッパの競馬大国です。

 

日本の競馬は平地競馬が中心ですが、フランスは冬季を中心に行われる繋駕速歩競走も人気です。

英語ではトロットレースやハーネスレースとも呼ばれる競馬で、馬車に騎手が乗って操るのが特徴。

専用の競馬場も数多く存在しており、大衆から高い支持を得ている、ポピュラーな競馬です。

パリのオートゥイユ競馬場などで開催される障害競走も、ビッグレースは大変盛り上がります。

 

フランスの競馬場は全国各地に200以上あり、田舎には開催日数の少ない小さな競馬場もあります。

その多くは日本でいうところの地方競馬のような存在の競馬場で、殆どは独立した団体が運営しています。

ただし、日本で知られているビッグレースの大半はフランスギャロが運営する主要な競馬場で開催されています。

■フランス競馬のレースや仕組み、有名な開催など

フランスにおける平地競馬の開催時期は4月から10月までで、冬季はオフシーズンに入ります

重賞が行われるのは基本的に現地時間の日曜日、日本時間では日曜日の夜にあたります。

レース映像の生中継はフランスギャロの公式サイトから会員登録をすれば誰でも見られます。

 

レース名は「ステークス(Stakes)」ではなくフランス語の「賞(Prix)」が付きます。

パリ大賞典やシャンティイ大賞のような歴史ある競走は「大賞・大賞典(Grand Prix)」です。

 

馬場は芝での開催が基本ですが、冬や春先は馬場凍結のためオールウェザーで開催されます。

近年はオールウェザーの新設も増えており、2018年にはパリロンシャン競馬場に新設されました。

ただし、オールウェザーで行われるレースはメイドン(未勝利戦)や条件戦が中心となっています。

 

2018年現在で27個のG1が行われているフランス平地競馬ですが、最も盛り上がるレースは、やはり凱旋門賞。

開催日は凱旋門賞ウィークと銘打って前日と合わせて7個のG1が開催、各国の競馬ファンが注目する週末となります。

フランス競馬にとってシーズン終盤の祭典という立ち位置で、どれも見逃せない熱い激戦が繰り広げられます。

 

その凱旋門賞はフランスのみならず、ヨーロッパの中長距離路線の最重要レースのひとつ。

開催時期も他のビッグレースと被らず、賞金もトップクラスのため各国の強豪が挙って出走してきます。

2008年にカタールの団体がスポンサーに就任してからは賞金の増額もあり、影響力も更に増しています。

冒頭でも紹介した通り、日本の名馬も挑戦し続けており、日本の競馬ファンの注目度も非常に高い一戦です。

 

そして競馬で一大イベントとされるクラシックですが、実はフランスではオークスの方が人気があるそうです。

仏ダービーの後に開催される仏オークス(ディアヌ賞)は毎年多くの観客が集まり華やかな開催となります。

三冠は牡馬・牝馬ともにあまり意識されることはなく、形骸化していると言っても過言ではない状況です。

 

2005年に仏オークスと同時に距離短縮を決めた仏ダービー(ジョッケクルブ賞)も特徴の一つ。

英ダービーとの差別化を理由に思い切った決断に踏み切りましたが、今は2100mの距離も定着しています。

目論見通りに短縮後は中距離が得意の馬が好結果を残しており、長距離馬は2400mのパリ大賞典を選びます。

 

フランスはヨーロッパの他国との交流も盛んなため、外国馬の出走も決して珍しくありません。

ジャックルマロワ賞のような国際的に重要と見なされるレースには各国の強豪が押し寄せてきます。

逆にフランス馬も積極的に国外遠征を行うため、フランスでしか走らないトップホースは殆どいません。

 

レースは少頭数の競馬になることも多く、条件戦だけではなく重賞でも頭数が集まらないことがしばしば

頭数が少ない展開では目に見える駆け引きも無く淡々と進み、直線のラストスパート勝負で決着が決まります。

また、風の抵抗を減らすためか道中は一直線の隊列でレースが進む展開もフランス競馬の特徴と言えます。

 

調教師が厩舎を構える拠点はフランスギャロが管理しているシャンティイ調教場が有名です。

凱旋門賞に遠征する日本馬も利用する広大な調教場で、フランスの多くの一流調教師が使っています。

他にも競馬が盛んな街のメゾンラフィット、馬産地のドーヴィル、南仏のポーに調教場があります。

 

ちなみにフランスはブックメーカーでは発売が禁止されており、馬券はPMUという指定の業者が発売しています。

場外馬券場が非常に充実しているため、カフェやタバコ売り場で気軽に馬券が購入できる環境になっています。

そのため競馬場は重要なレースの開催日でもガラガラという、日本では考えられないことも珍しくありません。

レースの賞金こそ少ないですが、おかげで馬券の売り上げは好調で、競馬運営は安定しているようです。

 

余談ですが、フランス競馬は枠入れが時間がかかり発走時刻が遅れることが頻繁に起こります。

特に経験の浅い馬が多い2歳戦はその傾向が顕著で、結果的に5分以上遅れたことも過去にありました。

日本ではありえない驚きの出来事ですが、フランス競馬では日常的に起こるため、頻繁にフランス競馬を観戦していると次第に慣れます。

■フランス競馬の馬産地、主要な種牡馬

フランス最大の馬産地は北西部のノルマンディー地方、馬以外の農業も有名な地域です。

生産頭数は年によって多少の変動はありますが、基本的には5000頭前後を維持しています。

アイルランドよりは少ないですが、イギリスは上回っておりヨーロッパでは2位の生産国です。

フランス競馬で走っている競走馬はフランス産馬が中心ですが、外国産馬も多く走っています。

活躍する種牡馬もアイルランドで供用されていることがあったりと、各国の血統が見れます。

しかし、生産者が伝統的に守り続けている血統も存在し、ユニークな血統の馬もいます。

 

アガ・カーン殿下が所有するボンヌヴァル牧場で供用されているシユーニは注目度が高い種牡馬。

現役時代は2歳G1を1勝のみに終わりましたが、種牡馬としては牝馬を中心に活躍馬を輩出しています。

日本のノーザンファームで繋養されている繁殖牝馬のシユーマは同馬の半妹にあたります。

 

エトレアム牧場で供用中のウートンバセットは産駒の活躍で種付け料が一気に上がった種牡馬です。

代表産駒のアルマンゾールは英チャンピオンSなどを制して2016年の欧州最優秀3歳牡馬に選ばれる活躍。

当初は100万円にも届かなかった種付け料は、産駒の大活躍を受けて250万近くにアップしました。

ちなみに、そのアルマンゾールも父と同じエトレアム牧場で種牡馬入りしています。

 

最後に紹介しておきたいのが、フランス最大のセリ主催会社のアルカナ社について。

本社を構える馬産地のドーヴィルでセールを開催しており、フランス産馬を中心に多くの馬が上場されます。

毎年8月中旬に行われる1歳馬が対象のアルカナ・オーガストイヤリングセールは大変な盛況で有名です。

■フランスの主な競馬場

○パリロンシャン競馬場

1857年に開業、2018年に約2年に及ぶ改修工事を終えて再オープンした日本でもお馴染みの競馬場。

フランス競馬の中心地として凱旋門賞やパリ大賞典などのビッグレースが開催される競馬場です。

2018年の大規模改修工事ではオールウェザーコースの新設、スタンドの改装が行われました。

なお、再オープン直後は芝コースが酷く荒れているとして、一部で物議を醸しました。

シャンティイ競馬場

1834年に開業、仏ダービー(ジョッケクルブ賞)が開催される歴史ある競馬場として有名。

馬の街として知られるシャンティイにある競馬場で、シャンティイ城と隣接する美しい競馬場です。

上記のパリロンシャン競馬場が改修工事の期間は凱旋門賞やイスパーン賞が開催されていました。

直線はゴールに向かって長い坂が続いており、タフなコースとしても知られています。

○ドーヴィル競馬場

1863年に開業、ジャックルマロワ賞が行われる夏の競馬開催が有名な競馬場です。

ノルマンディー地方の高級避暑地として賑わう競馬場で、観光客にも人気のスポットです。

ジャックルマロワ賞のコースにもなっている1マイルの直線コースが特徴と言われています。

○サンクルー競馬場

1901年に開業、エルコンドルパサーも制したサンクルー大賞の開催地として知られる競馬場。

パリ郊外のサン・クルーにある競馬場で、上から見ると三角形になっているコースが特徴です。

翌年の中距離路線に繋がる主要な2歳G1である、クリテリウムドサンクルーも行われています。

○メゾンラフィット競馬場

1878年に開業、セーヌ川の辺りにある非常に長い直線コースが名物の広大な競馬場です。

2018年現在でG1レースの開催はありませんが、フランス競馬に於いては重要な競馬場の一つ。

長く伸びている直線コースでは直線2000mのレースも開催できるという設計になっています。

日本から遠征した馬ではジェニアルやエイシンエルヴィンが同競馬場で勝ちました。

○オートゥイユ競馬場(障害競馬専用)

1973年に開業、パリ近郊のオートゥイユにある伝統の障害競馬専用の競馬場です。

5月に開催されるフランス障害競馬の祭典・パリ大障害は毎年大盛り上がりとなります。

競馬場近くにあるオートゥイユ駅は、凱旋門賞の際に多くの日本人観光客が訪れています。

■最後に

今回紹介したフランス競馬ですが、日本馬の遠征や騎手の交流も多く身近な存在と言える競馬国です。

凱旋門賞はほぼ毎年のように日本語で生中継が行われ、フランス競馬に興味を持っている方も多いと思われます。

日本でもお馴染みのルメール騎手の母国でもあり、来日経験を持つフランスの騎手も多数います。

レースはネット配信もあって手軽に楽しめる環境も整っており、敷居が低いことも長所と言えるでしょう。

この記事を見てフランス競馬に少しでも興味を持っていただけたら、幸いに存じます。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

文・Hartley

写真・ラクト