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[インタビュー]14年ぶり、高知に女性騎手誕生!濱尚美騎手インタビュー

 

2019年4月13日、3人の新人騎手が高知競馬にてデビューを果たした。

 

妹尾将充(せのおまさちか)騎手

多田羅誠也(たたらせいや)騎手

濱尚美(はまなおみ)騎手

 

今回、その3人のうちの1人である濱尚美騎手にお話を伺うことが出来た。

 

地方競馬で女性騎手がデビューするのは5年ぶり。さらに、高知競馬では約14年ぶりの女性騎手誕生となった。

そのため濱騎手は、どうしても『女性騎手』という点で注目されがちだ。

 

マカロンとお肉が大好きで、ゴーヤとレバーは苦手──。

 

そう答える濱騎手は、確かに18歳の女の子らしい素顔を見せてくれる。

しかし、今回のインタビューは、濱騎手のその人間性が垣間見えるものとなった。

インタビューで感じられた、濱騎手の内に宿る『真摯で熱い魂』をお届けしたい。

 


 

■祖父の一言で決まった、騎手への道

 

濱尚美騎手は2001年5月29日生まれ。

 

幼い頃から馬と触れ合うことの多かった彼女は、自然と騎手を目指しはじめた──などと、勝手にストーリーを思い描いていた私にとって、濱騎手の回答は驚きの連続だった。

 

まず、幼少期に馬と触れ合うことは全くもってゼロだったという。

競馬を見はじめた中学生の頃は、祖父の家でテレビをつけたときに競馬をしていたら見る、といった感じ。特に競馬には詳しくなかったのだという。

好きだった競走馬も、特にはいない。

──そんな彼女が、なぜ騎手という道を選んだのだろうか?

 

それは、高校へ進学する間際のこと。

バスケをしていた濱騎手は「自分はプロ選手になりたいわけではない」と、将来をふと考えていた。

 

趣味は音楽を聴くこと、映画を観ること、自然を見に行くこと。

更にはアコースティックギター、スポーツ全般(特にバスケットボール)、裁縫、ゲームなど彼女の興味は多岐に渡り、まさに『好奇心旺盛』という言葉が相応しい。

そんな多趣味な濱騎手の騎手への道は、祖父の一言によって拓かれた。

 

「騎手にならんか」

 

テレビで一緒に競馬を見ていた、ふとした瞬間だった。

その一言で、彼女は騎手になることを決めたという。

 

いきなり騎手になると言い出せば周囲の反対もあるかと思いきや「驚きとともに応援の方が多かった」とのことで、それが濱騎手の背中を押した。

 

 

■競馬学校で培われた人間関係

 

競馬学校に入所してから、一番苦労したのは人間関係だった。

入所当時は、同期・先輩・教官……誰も女性がいない環境。本当に話すことがなかったと語る濱騎手。

しかし、それも今となっては、あの時苦労しておいて良かったと思っているそうだ。現在の騎手としての周囲との人間関係にも役立っているのではないだろうか。

 

また、思うように馬を動かせない日々にも苦労したという。

 

「馬は言葉を話せないので、人が一時の感情に任せて怒ったりすることなく、馬の気持ちを少しでも理解したり感じとれるようになりたいと思いながら接しています」

 

苦労した日々があるからこそ、こうした考えにたどり着けるのだろう。

 

競馬学校は、騎乗についてだけを学ぶ場所ではない。騎手となるために、そしてその後の騎手生活のために──。

競馬学校で過ごす時間は、その人間性を高めるためにも、必要不可欠なものだった。

濱騎手はそれをよく理解し、実際に自分を成長させることが出来たのだ。

 

 

■勝負服に込めた想い

 

騎手ごとに勝負服が決まっている地方競馬。

濱騎手の勝負服は「胴赤 黒V字たすき 袖黒 赤一本輪」と、赤と黒を使用するデザインだ。

自身のトレードマークとも言える勝負服。

なぜ、このデザインにしたのだろうか。

 

「95期の渡邉竜也先輩のデザインに憧れて、あのデザインにしようと入所当時から決めていました」

 

そして色について。

こちらも熱のこもった回答が返ってきた。

 

「赤」は濱騎手自身のイメージカラー。

他にも、広島カープ(濱尚美騎手は広島県廿日市市出身)などの意味を持たせているという。

そして、注目すべきは「黒」への想いだ。

 

「一見暗いけれど、どんな色でも自分の存在を放ちつつ、他方の色も生きているので、どんな色の馬に乗っても馬の良さを生かしながら乗れる騎手になりたいという想いを込めています」

 

勝負服のデザインにも、これだけの想いをしっかりと詰め込んでる……濱騎手のこだわりや強い意志が感じられる。

 

「報われない努力があるとするならば、それは努力とは呼べない」

元プロ野球選手&監督の王貞治さんの名言を座右の銘として掲げているのも、頷けた。

そんなストイックな一面は、必ずやこれからの騎手人生を支えるものとなるだろう。

 

 

■高知競馬という「ホーム」

 

濱尚美騎手の出身は広島県廿日市市。

騎手としてやってきた高知県の印象を聞いてみると、元気な回答が返ってきた。

 

「自然が豊か!!星がキレイ!海が近い!何より人がすごくフレンドリー!!」

 

はっきりとそう言い切る元気の良い回答は、若さだけでなく、心から高知を想っているからこそ。

濱騎手は、すっかり高知に魅了されているようだった。

 

 

濱騎手が高知競馬をホームとして選んだ理由を尋ねてみた。

 

まず真っ先に挙がったのが「明るい」ということ。

そして一番は「新人にチャンスがある」というところが決め手だったのだとか。

自分自身の強みを「ゲート」と「明るい所」と語る濱騎手にはぴったりの環境なのかもしれない。

 

そんな高知競馬の良いところは「皆さんすごく仲が良くて、でもレースではガチで勝負するところ」なのだそうだ。

先輩たちや先生も「すごく優しい」というが、「いけないことはいけないと、しっかりと叱ってくださる厳しさもあります」とのこと。

 

そして目標としている騎手は同じ高知所属の別府真衣騎手

身近に目標としている存在がいることは、これからの濱騎手の成長に大きな影響を与えるだろう。

 

 

■デビュー戦&初勝利

 

そんな大好きな高知競馬にて、濱騎手はデビュー戦を迎えた。

3番人気ノーブルサイレンスに騎乗し、結果は9着。

 

「すごくガチガチになって表情が本当に『無』になっていました」

 

濱騎手がそう明るく話せるのも「今はだいぶ余裕を持ってレースに臨めている」からかもしれない。

 

初勝利は、4月20日の第8レース。

1番人気プラチナコードに騎乗し、期待に応えて見事先頭でゴールを駆け抜けた。 

実は、その前の7レースで同期で同郷の妹尾将充騎手が初勝利を挙げており、それを見た濱騎手は気持ちに火がついたのだという。

通算12戦目でのうれしい初勝利は、幼い頃からのその負けず嫌いな性格も影響していた。

 

「こんなに大変で厳しいとは思っていなかったけど、騎手になれてすごくうれしいです」

 

騎手という、厳しい世界で生きていく。

その喜びと覚悟が見えた、そんなインタビューだった。

 

 

■濱尚美騎手からメッセージ

 

最後に、濱尚美騎手から高知競馬ファンの皆様へのメッセージをいただいたのでご紹介したい。

 

「いつも応援して下さり本当にありがとうございます!すごく元気をもらっています!まだまだ未熟で期待に応えられるような騎乗ではありませんが、一鞍一鞍本当に全力で乗っています!これからも応援よろしくお願いします」

 

「長く必要とされる騎手になりたい」と自身の描く騎手像を語る濱尚美騎手。

きっと、これからそのフレッシュさと明るさで、高知競馬を引っ張り、盛り上げていく。

このインタビューを通して、そんな未来が見えた気がした。

 

文・笠原小百合

写真・濱尚美騎手Twitter(@basketnaomi529

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