[重賞回顧]第71回阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)~ダイワメジャーは自力で勝る~

スカーレットインクの牝系は別名を「華麗なる一族」という。

スカーレットレディからサカラート、ヴァーミリアン、キングスエンブレム、ソリタリーキングと砂の猛者たちが生まれ、スカーレットブーケからはダイワルージュ、ダイワメジャー、ダイワスカーレットが生まれた。

特にダイワメジャー、ダイワスカーレットは薄手な馬が多いサンデーサイレンスの父系とは思えない、逞しい筋肉質な馬体とスピードとパワーを兼備した走りで時代を築いた。

そして、瞬発力に対抗できる持続力という概念を根づかせた「華麗なる一族」から、またも新星が登場した。

それが第71回阪神ジュベナイルフィリーズを制したレシステンシアだ。

レシステンシアの事前評価は3強に次ぐ4番手。

デビュー2戦で圧巻の末脚を披露したリアアメリア、ウーマンズハートのインパクト、牡馬相手に重賞2着のクラヴァシュドールの実績と比較すると、ファンタジーS勝ちはやや地味な印象を与えたようだ。

ウーマンズハートに敗れて以来、2戦2勝のマルターズディオサ、牡馬相手にアイビーS2着があるクリスティらがこれら4頭に続いた。

近年の阪神ジュベナイルフィリーズ同様にスピードに長けた逃げ馬はいないと思われた、今年の組み合わせ。

しかし、スタートを決めたレシステンシアが自らハナに立つことで一変した。

テンの速さに手応えがあったであろう北村友一騎手もほかに行く馬がいなければ、自分で行こうと考えていたのだろう。

一瞬の躊躇もなく主導権を奪った。

インから予想外にウーマンズハートが先行する意思を見せ、外からロータスランドが並びかける。

2頭がレシステンシアの後ろを離れずに追走すると、後続も離されまいと団子状態になる。

マルターズディオサ、ボンボヤージ、エレナアヴァンティ、クリスティ、ヤマカツマーメイドと大きな先行集団ができ、後方馬群の先頭にクラヴァシュドール、その後ろにオータムレッド、カワキタアジン、ルーチェデラヴィタ、ジェラペッシュと続き、リアアメリアは最後方列の外に控え、ヒメサマ、スウィートメリアと並ぶ。

スローペースかと錯覚するような固まった馬群を引っ張るレシステンシアのペースは、実際は超がつくハイペース。

前半600m33秒7は阪神のスプリント戦でもあまり出現しないラップであり、前半800m45秒5は2歳牝馬GⅠとしては異例の急流だった。

後続を引きつけて逃げるレシステンシアの手応えより先に、後ろの組が苦しくなっていく。

ウーマンズハート、マルターズディオサ、クラヴァシュドールが懸命に追いあげる4角。

レシステンシアがスパートをかけると、背後の3頭を一気に突き放した。

後方にいたリアアメリアは川田将雅騎手のアクションにうまく応えられない。

苦しむ後続を振り切ったレシステンシアは残り200mで早くも勝負を決めてしまった。

ウーマンズハートをマルターズディオサとクラヴァシュドールが交わすも、レシステンシアとの差はもはや決定的。

これらは2着争いにすぎず、レシステンシアは見事ひとり旅でゴール。

2着はクラヴァシュドールを振り切ったマルターズディオサ、3着はそのクラヴァシュドールだった。

勝ち時計はウオッカの基準タイムを更新する1分32秒7(良)のレコードだった。

各馬短評

1着レシステンシア(4番人気)

先手を奪い、自らが得意とするスピードと持続力、耐久勝負に持ち込んだ点が勝因。

前半、後半の半マイルを45秒5-47秒2という3強が経験したことがない激流を演出し、最後の600mを最速35秒2では後続は追い上げようがない。

特に残り800mから12秒0から11秒2という瞬時のギアチェンジは見事だった。

2番手以下が控えずに追いかけ、なし崩しに脚を使ってくれたのは助かった部分ではあるが、破られなかったウオッカの基準タイムを逃げて更新、桜の女王最有力は揺るがない。

2着マルターズディオサ(6番人気)

レシステンシアの急流に力を引き出された形。

同位置にいたウーマンズハートを競り落とし、後ろにいたクラヴァシュドールを封じたのは高評価としたい。

インから上がり最速を記録した未勝利戦、外からねじ伏せた中山のサフラン賞、そしてハイペースを積極的に追いかけた今回と競馬に自在性があり、田辺裕信騎手とは手が合いそうな天才型。

今後も活躍が見込める。

3着クラヴァシュドール(3番人気)

サリオス相手に互角の戦いを見せた実力はこのレースでも発揮した形。

3強のなかでは再先着を果たし、なんとか桜戦線に望みをつないだ。

4着ウーマンズハートと同じハーツクライ産駒でまだまだ成長曲線は先。

成績的にはリスグラシューと似た雰囲気を感じるだけに来年即逆転できるかは分からないが、いずれ必ず強くなる馬だ。

総評

レシステンシアのパドック映像はぜひとも振り返ってほしい。

豊富な筋肉、トモ高に見えるほど発達した後肢は、走るダイワメジャー産駒のシルエットそのもの。

同じ華麗なる一族のダイワスカーレット、ダイワメジャーの子どもでマイルGⅠ2勝のメジャーエンブレムも同じような容姿だった。

レシステンシアの記録は飛びぬけたもので、阪神マイルで最初の600m33秒7は歴代最速。

このコースはスタートから3角を頂点に向正面は上りが続きペースが上がりにくい構造だ。

それを加味すれば、このペースを楽に走るレシステンシアは超S級マイラーだろう。

一方、こうした激流に見事に飲み込まれたのはリアアメリア。

後方で末脚を温存する競馬は展開利がありそうだが、結果的にこのペースで温存できなかった様子。

ゆったりとした競馬に強いディープインパクト産駒と耐久レースに強いダイワメジャー産駒、その違いがくっきりと明暗をわけた。

当面、レシステンシアがライバルだとすると、リアアメリアは耐久力を身につける必要があるだろう。

ウーマンズハート、クラヴァシュドールのハーツクライ産駒2頭とともに、この血統の三すくみは来年に向けて興味深いものとなった。

写真:ゆーすけ

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