年度代表馬の一口を持ってみて〜年間無敗の女王・アーモンドアイへの想い〜

「突き抜けるような異次元の末脚」

「澄んだ瞳と凛とした顔、名前」

「世界に挑む、無限の可能性」

 

これは、とある馬の一口を持つ方が、Twitterで行ったアンケートの項目である。

愛馬の魅力を尋ねたアンケート。

ここには、並々ならぬ愛馬への想いが詰まっている。

 

『実は、サラブレッドではないのではないか……そう思ってしまうほど、全てが完璧な馬。

 フットワークを見ると、新種の生き物のように感じる。』

 

いくら愛おしい自分の出資馬とは言え、それは言い過ぎなのでは?

──そう思う人も、いるかもしれない。

けれど、この名を聞けばそれも納得いくだろう。

 

愛馬の名は、アーモンドアイ。

2018年度JRA賞の年度代表馬、最優秀3歳牝馬に選出された名馬だ。

 

一口馬主なら誰もが羨む、出資馬の年度代表馬選出。

今回は、そんなアーモンドアイに出資する幸運を掴み取った中の1人、一口馬主のAさんにお話を伺った。

Aさんのアーモンドアイへの想いとは、一体どういったものなのだろうか?

 

 

アーモンドアイは、その愛らしいルックスからは想像も出来ない、驚くべき強さを持った馬だ。

危なげなく牝馬三冠を達成したかと思えば、ジャパンカップでは驚愕のレコードで古馬を蹴散らし、現役最強馬の座へと上り詰めた。

2018年はアーモンドアイの1年だった、と表現しても過言ではないだろう。

それを証明するかのようにアーモンドアイは、JRA賞となった1987年以降、2000年テイエムオペラオー以来の史上2頭目の満票での年度代表馬選出となった。

 

 

アーモンドアイの情報を発信するため、Twitterアカウントを運営しているAさん。

満票の報せを受けて喜びのツイートをした……かと思いきや、そうではなかった。

満票になると信じて、あらかじめ満票で選出された旨のツイートを下書きしていたのだ。

確信にも近い想いからのAさんの行動は、アーモンドアイの活躍を見てきたからこそのもの。

Aさんは報せを受けた後、早く祝杯をあげたくて仕方なく、仕事が手に付かなかったという。

 

 

そんなAさんの一口馬主歴は、20年。

中山大障害を制したレッドキングダムなど、今まで100頭弱の競走馬に出資してきたという。

そして20年目にして、とうとうアーモンドアイと巡り合ったというわけだ。

 

競馬の魅力に取り憑かれたのは、高校1年生の時。友人に連れられて笠松競馬場へ行ったのがきっかけだ。

「いいか、馬なんて、ケツの大きいヤツを買ってれば当たるんやぞ!」

友人の魔法のような言葉、地面が揺れるほどの迫力のレース。

 

どっぷりと競馬に嵌った瞬間だった。

 

 

アーモンドアイに出資したのは友人に勧められてだというから、きっかけはどこに転がっているかわからない。

「自分で選んでいたらきっと出資していなかったと思う」Aさん。

出資当初はアーモンドアイがこんなに活躍するとは想像も出来なかった。

ただ、馬体と気性が良かったので、オープンクラスの活躍はするだろうとは思っていたという。

 

そうこうしているうちに、デビューの日は近づく。新馬戦の前に内田騎手が調教で跨った時の好感触なコメントを見て、これはひょっとして……と感じた。しかしまだ、予感に過ぎなかった。

 

──それが確信に変わるのは、未勝利戦を見たときだったという。

 

蓋を開けてみれば、年度代表馬に選出されるほどの活躍ぶり。Aさんにアーモンドアイを勧めた友人は今頃、鼻高々だろうか。

 

きっかけこそ友人の勧めであったが、Aさんのアーモンドアイへの想いは日々高まっていく。

 

2018年にアーモンドアイが参戦したGⅠは、すべて現地観戦。

ノーザンファーム天栄にも、2度足を運んだ。

つまり合計6回、アーモンドアイに会いに行ったという事になる。

 

 

そんなAさんにとってアーモンドアイの牝馬三冠達成は、この上なく嬉しいものだった。

 

しかし、如何せん、アーモンドアイは強すぎた。

一番楽観視していたというオークスでは、馬券の結果の方が気になり、直線で23着争いに目がいってしまった。

「ちょっと不純でした」と語るAさんだが、それくらい安心して見ていられたレースだということだろう。

 

反対に、牝馬三冠の中で一番不安だったのが秋華賞だという。

しかし結果としてその秋華賞は、今までアーモンドアイが出走したすべてのレースの中で最も衝撃を受けたレースとなったのだと、Aさんは語る。

「彼女の能力と陣営の努力、手腕にただただ感服するばかりです」

 

不安もあったからこそ、あのアーモンドアイの強さを目の当たりにしたときに、大きな衝撃となってAさんの心に響いたのだ。

 

──そして、忘れてはならないのが、ジャパンカップ。

勝ち時計は、なんと2206

今までのコースレコードを15上回るという凄まじいタイムでの勝利だった。

秋華賞後の疲労等が心配だったが、陣営が出走を明言してからは一切不安はなかったというAさん。

一口馬主と陣営、そしてアーモンドアイとの間に、確固たる信頼関係があるのを感じる。

それは、アーモンドアイの強さを心から信じているからこそ、成立しているものなのだろう。

 

 

「今後出走して欲しいレースは?」という質問には、あの世界最高峰のレースの名前が返ってきた。

そう、ディープインパクトやオルフェーヴルですら勝利に届かなかった、凱旋門賞だ。

出資馬が日本で初めて凱旋門賞を勝つことを目標としていたAさんにとって、ようやく巡ってきたチャンスとも言えるのが、このアーモンドアイとの出会いなのだ。

日本馬による悲願の凱旋門賞制覇も、アーモンドアイならば……。

今までのレースぶりを思い返すと、出資していなくとも、そう期待せずにはいられない。

しかしまずは「とにかく無事にいってくれたら。それに尽きます」という言葉が出てきた。

Aさんの親心としては、それは当然のごとく一番に浮かぶのだろう。

 

凱旋門賞という世界へ目を向けているかと思えば、「ラストランは国内で……」という想いもあるという。

出来るだけ多くのファンにその瞬間を観て欲しい。

そう願うAさんの言葉に、思わず深く頷いた。

この目に、アーモンドアイ最後のレースを映すことが出来たら──アーモンドアイの強さを語り継いでいくためにも、その目撃者はひとりでも多いほうが良い。

 

 

「アーモンドアイと対戦して欲しい馬は?」という質問の回答には、Aさんの競馬観も見え隠れしている。

現役馬では、具体的な名前は挙げずに、国内外の「より強い相手」を望むとのことだった。

そして実現はしないが、引退馬の中ではアーモンドアイの父、ロードカナロアとの対戦が見てみたいと、Aさんは言う。

「東京競馬場の芝マイルあたりはどうでしょうか。結果は、想像もつきません」

ロードカナロアVSアーモンドアイ。

確かに、そのフレーズだけでもう胸が高鳴る。

競馬の楽しみ方は人それぞれだが、ときには想像上で名馬たちを対戦させるのも面白い。

 

 

 

Aさんはアーモンドアイの自作ポスターをTwitterのフォロワーにプレゼントするという企画もされている。

実はこの企画、もともとはアーモンドアイを担当される根岸助手や椎本助手のご家族へのプレゼントとして企画されたものだった。

 

場内のビジョンに大映しになるアーモンドアイと、厩舎スタッフ。

ジャパンカップのウィナーズサークルでは、ビジョンに輝く、レコード2206の文字を背景に、寄り添う根岸助手のご両親の姿を写真に収めることができた。

『額装してプレゼントしよう!』と考え、準備をスタートさせたAさん。

しかし、Twitterのタイムラインに流れるアーモンドアイの画像を見ては、次第に『一緒に飾りたい』という思いが生まれてきた。

そこでTwitterを通じて呼びかけをしたところ、多くの人から写真が寄せられるようになったという。

取捨ができないほど、素晴らしい瞬間を切り取った写真の数々。

あっという間に、額に収まらなくなった。

 

その時、頭に思い浮かんだのは、競馬に没頭し始めた高校生のAさんの元に、競馬月刊誌『優駿』編集部から届いたプレゼントだった。

部屋に掲げ「いつかは僕もG1オーナーに……」と思いを募らせて眺めていた、G1勝ち馬が並んだポスター。

ポスターであれば、載せるスペースを気にせずにレイアウトできる。

 

そこからは、一気に動きが加速する。

Aさんは昔世話になった印刷会社に連絡し、イメージやコピーを共有、写真データを送り、校正を進めた。

幾度となくやりとりを重ねてできたラフ案をTwitterに掲載したところ、たくさんの言葉がAさんのもとへ届いた。

 

「ぜひ部屋に飾りたい」

「アイちゃんがぎっしり詰まっている」

「神がかったレイアウト」

 

そこでAさんは、ご家族に渡すものとは若干写真を入れ替え、フォロワーたちに向けてポスターを配布している。

 

当初の企画から、スピンオフして生まれたアーモンドアイのポスター。

「写真を無償で提供いただいた方々、何度も修正を重ねてくださったデザイナーさん、印刷会社の方々、チーム・アーモンドアイの関係者、そして、ファンの皆さんがいなければお届けできなかったものになります」

そんな想いから、印刷・制作費用は、すべてAさんが負担している。

また、当時高校生だったAさんがポスターから原動力を受け取ったことを思い返し、高校生以下の方には送料を含む一切の料金を無償とした。

アーモンドアイへの、競馬へのAさんの想いの深さがうかがい知れるエピソードだ。

 

 

ポスターもはじめはスタッフの家族へのプレゼントとして企画されていたように、アーモンドアイのスタッフへの心配りを忘れないAさん。

 

「類まれな能力を持つがゆえに、プレッシャーや調整の難しさは半端でないと思います。

 常軌を逸した規格外の臨戦過程にも関わらず、あれだけの走りをみせられたのは、チーム・アーモンドアイの皆さんのおかげです。感謝しかありません。

 やがて訪れる引退式では、メンコを取って、その美しい顔を大勢のファンに見せていただければ幸いです」

 

チーム・アーモンドアイへのメッセージには丁寧な想いが込められており、胸に響く。

また、読者へ向けてのメッセージにも真摯なまでの愛情と感謝の気持ちに溢れているので、ぜひ読んでいただきたい。

 

 



 

アーモンドアイの魅力を競馬を知らない方々にまで伝えたいとツイッターを始めました。

 お陰様で多くのフォロワーさんに支えていただけるようになりました。

 全てはアイちゃんの凄さに尽きるのですが、それに輪をかけて取り巻くチーム・アーモンドアイの方々も素晴らしく、楽しく情報発信ができています。

 

 しかし、彼女にも引退の日は訪れます。

 クラブの規定により、牝馬は現役で走ることができるのは、6歳の3月までと定められています。

 アーモンドアイも例外ではなく、現役生活を続けられるのは長くともあと2年です。

 そのため、国内で出走する場合は、ぜひ現地で観戦していただければと思います。

 

 これからもアーモンドアイや携わる方々の魅力を可能な限り発信していきますので、ご期待、ご声援をよろしくお願いいたします。

 

 


 

引退の話が早くも出たが、規定で決まっているとなると、余計に意識してしまうところだろう。

 

「産駒が東京芝2400m2:20.6のレコードを塗り替えてくれたら、最高ですね」

 

そう語るAさんの言葉からは、産駒の活躍を心から楽しみにしていることが伝わってくる。

いつか、迎える引退のその日は、ただの「終わり」ではない。

アーモンドアイの未来は、その先も続いていくのだ。

 

だからこそ、まずはとにかく無事に。

そして、アーモンドアイの更なる活躍を楽しみにしたい。

 

最後に。

Aさんから、アーモンドアイへ。

 

「まるで真実を映すかのようなその瞳に、いったい何が見えているのか」

 

語られたメッセージは、スタッフやファンへ向けたような感謝の言葉ではなかった。

もちろん、感謝の想いは一番にあるだろう。

だが、それを差し置いて、この言葉が浮かんだのはなぜだろうか。

 

これほどまでの素晴らしい愛馬と出逢えた、感謝と感動。

そしてそれに加えて、畏敬の念に似た想いもあるのではないだろうか。

うかつに近づくことの出来ない、神聖なる存在。

そんな想いも、Aさんはアーモンドアイに対して抱いているのではないかと感じた。

 

ひとりの一口馬主が、愛馬へと向けた言葉。

その奥に潜む深い愛情は、どこまでも澄み渡っている。

 

 

それはまるで、アーモンドアイの美しい瞳、そのもののように思えた。

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アーモンドアイ ポスター画像
Aさんが配布しているアーモンドアイのポスター画像です。
almondeye.pdf
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