『ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何ものでもない。それ以上でもそれ以下でもない』

週刊少年ジャンプで連載されている漫画「銀魂」のファンならば誰もが知っている名(?)台詞。
そして、今回の記事の主役である競走馬『ジャスタウェイ』の馬主は、アニメ銀魂のシリーズ構成を3期まで担当していた脚本家の大和屋暁氏です。
馬名の由来は公式において「Just a Way/その道」と登録されていますが、実際は銀魂に登場する爆弾「Just away/すぐ逃げて」に由来しているだろうというのは想像に難くありません。

デビュー当初は一部のファンに「ネタ馬」として応援されていた競走馬は、いつしか世界一の競走馬になっていました。

ジャスタウェイ 〜主役は遅れてくるくらいが丁度いい〜

シビルの2009ことジャスタウェイは、父ハーツクライと母シビル(母父Wild Again)の間に生まれた牡馬です。毛色は鹿毛、誕生日は3月8日。

2010年のセレクトセールにおいて大和屋暁氏に1,200万円(税抜き)で落札されました。

同年のセールにおける最高落札価格が11,200万円(税抜き)であることを踏まえると「お手ごろな値段」といえるのではないでしょうか。ちなみに落札された全ハーツクライ産駒の中では3番目、1歳のハーツクライ産駒のなかでは最も安い価格でした。

ハーツクライ産駒はファーストクロップの馬たちがデビューしたばかりであったこと、ジャスタウェイ自身が父と同じ「ガニ股」であまり歩様が良くなかったこともあり、この価格になったと推察されます。

「ガニ股」が遺伝なんて、『親子ってのは嫌なとこばかり似るもんだ』。

ジャスタウェイは爆発的な末脚を武器に22戦(うち海外2戦)を走り、6勝(うち海外1勝)をあげました。
国内の20戦のうち12戦で上がり最速を記録していて、上がり32秒台を3度も繰り出していることからも、その末脚の強烈さがうかがえます。

しかし、右前脚に不安を抱えていたこともあり、3つのG1勝利はすべて左回りのレースとなりました。

真面目に走る競走馬に悪い奴はいない

ジャスタウェイのデビュー戦には2011年7月23日の新潟競馬場の芝1600mという舞台が選ばれました。
鞍上に福永祐一騎手をむかえて、4番人気という評価でレースに臨みます。

好スタートから先行し余裕の手ごたえで直線にむくと、そこからぐんぐんと加速して2着に5馬身の差をつけて初勝利を飾りました。
その後は新潟2歳ステークスに挑戦し2着、東京スポーツ杯2歳ステークスで4着となり2歳シーズンを終えます。
朝日杯に出走するプランもありましたが、不良馬場で行われた東スポ杯の疲労が著しかったため、陣営は無理をせずに休養を選択しました。
3歳初戦はきさらぎ賞に出走するも、レース中に舌を出すなどちぐはぐな競馬になってしまい不完全燃焼の4着。

クラシックやマイル路線のG1挑戦に黄色信号がともりました。

春のG1戦線に向けて賞金加算を狙うジャスタウェイ陣営は、次走にアーリントンカップを選択します。
そしてその必勝を期して臨んだレースで、彼は見事勝利をつかみ取ったのです。

スタートはまずまずでしたが、行き脚がつかずに道中は最後方を進みます。大外を回って直線を向くものの、位置取りは変わらず。開幕週の馬場であることを考えると絶望的なポジションに思えました。
これはもう届かないかもしれない……不安がよぎる残り200m、ジャスタウェイの導火線に火が付きました。
前を走る9頭をあっという間に抜き去り、先に抜け出していたオリービンをもゴール寸前にかわしさったのであります。
唯一の上がり34秒台、上がりが2位の馬との差は実に0.8秒。爆発的な末脚と呼ぶにふさわしいものでした。無事に賞金を加算したジャスタウェイは一息入れて、ニュージーランドトロフィーからNHKマイルカップを目標に設定しました。

ところが感冒によりニュージーランドトロフィーを回避。NHKマイルカップに直行することになってしまいます。そして一度狂ってしまった歯車は中々元に戻らず、ここからジャスタウェイ陣営は、長く我慢の時を過ごすこととなります。

連続で勝つことは難しいくせに惜しいレースは連続してあるもんだ

感冒からの立て直しをはかり挑んだNHKマイルカップは、後方から上がり最速で追い込むものの6着、日本ダービーでは生涯唯一の2桁着順である11着に終わりました。

オーナーは自身の著書で「ラスト3ハロン、34秒1の上がりで走っているので、距離がもたないとかそういうことはないのでしょうが、この時点では力不足。やはり参加賞といったところでした。」と日本ダービー挑戦を振り返っています。

その後は毎日王冠で12番人気の低評価を覆す激走で2着に食い込んで本賞金を加算。なんとか出走にこぎつけた天皇賞秋では6位入線を果たしました。

年内にもう1走、朝日チャレンジカップが予定されていましたが熱発でこれを回避。3歳のシーズンを終えました。

年が明けて4歳になったジャスタウェイのここまでの戦績は9戦2勝。今後G1に出走していくためには賞金の加算が必須です。

初戦には中山金杯が選ばれ新潟2歳ステークス以来となる1番人気に支持されましたが、直線の短い中山では懸命の追い込みも届かず3着を確保することが精一杯。

次走の京都記念も1番人気での出走となりましたが5着、その後の中日新聞杯では落鉄の影響もあり8着となり、さらには蹄を痛めてしまいます。

3戦して賞金が加算できなかったことに加え、蹄も痛めてしまったため、陣営は春のG1に挑戦することを諦めてリフレッシュの期間を設けました。

この休養は吉と出て、復帰戦のエプソムカップには+10キロと馬体を戻した状態で臨むことができました。

出遅れからハイペースを後方で追走し、直線は最内からするすると伸びてきてクラレントとハナ差の2着。

少し本賞金を加算できましたが、秋のG1に出走するためにはまだまだ足りません。

そのため夏のローカルシリーズでの続戦が決まり、真夏の新潟競馬場で行われる別定戦の関屋記念へ向かいました。

2歳時に2戦1勝、2着1回と相性がいい新潟コースで勝利を狙います……が、またしても痛恨の出遅れ。

先に抜け出したレッドスパーダを猛追するも2着。また少し本賞金を加算できましたが、それでもまだ足りません。

こんどこそ勝たねばならぬ、という背水の陣で出走したレースは、前年2着に好走した毎日王冠。

鞍上には前年と同じく柴田善臣騎手をむかえたジャスタウェイでしたが、またしても2着に敗れました。

勝ち馬のエイシンフラッシュの鞍上は前走ジャスタウェイの手綱を取った福永祐一騎手……なんということでしょう。

2度あることは3度ある。本賞金は微増にとどまります。

はたして目標としていた天皇賞(秋)に出走できるのか?!

ジャスタウェイ陣営は他陣営の動向に一喜一憂しながら、月末を待ちました。

写真:ラクト

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