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[重賞回顧]第36回マイルチャンピオンシップ(GⅠ)~完全無欠のキングマイラー~

 

マイルは競馬の基礎の中の基礎、根幹といっていい。

スピードとその持続性、騎手とのコンタクト、折り合いと呼吸、緩急に合わせたギアチェンジと、要求されるものはすべての競馬に通じる。

唯一、マイルだけが「マイラー」と単一距離でカテゴライズされる(スプリンターは1200mとは限らない)。

2019年に入ってから11月までの芝マイル重賞(3歳限定、4歳以上、3歳以上)勝ち馬を調べると、2勝以上した馬はノームコア(ヴィクトリアマイル、富士S)とインディチャンプ(東京新聞杯、安田記念)の2頭。いずれも納得のGⅠ馬。そのうちここに出走するのはインディチャンプのみで、つまりこの馬だけがマイル王、ベストマイラーになるだけの実績を有するレース、それが第36回マイルチャンピオンシップというレースだった。

 

マイル戦に注目すれば、近2戦続けてマイル戦に出走した馬はたった4頭。レッドオルガ、フィアーノロマーノ、クリノガウディー、カテドラル。いずれも伏兵級で、主役は中距離戦線からこちらに回ってきた組。芝2000m天皇賞(秋)2着のダノンプレミアム、同レースからはアルアイン、芝1800m毎日王冠を勝ったダノンキングリー、同レースからインディチャンプ、ペルシアンナイト、府中牝馬S(芝1800m)からプリモシーンと距離短縮の馬がズラリと並ぶ。

 

主要ステップレースで距離延長になるスワンSからは勝ったダイアトニック、2着モズアスコット、3着マイスタイル、4着タイムトリップ、5着グァンチャーレと掲示板組が出走。同距離にあたる富士Sからレイエンダ、レッドオルガ、クリノガウディー、カテドラル、エメラルファイトがここに駒を進めた。

 

秋のベストマイラー決定戦。「今年のマイル王」となると春のマイル王インディチャンプにしか資格はないが、当然ここを勝てば「秋のマイル王」として肩を並べられる一戦だけにどの馬も欲しいマイラーとしてのタイトルだ。

 

レース展開を支配したのはマイスタイル。京都金杯2着とマイル重賞でも結果を残すこの馬はその馬名の通り、マイペースを重視するスタイル。自らのペースで先導できると踏んだときにしか先行しない。つまり、ハナを奪いに行ったのは他に速い馬がいないと睨んだからであり、当然ペースは上がらず、先行集団はごった返す。

 

番手はインから京都マイルを得意にするグァンチャーレ、外から3番手につけたフィアーノロマーノは全6勝中4勝がマイルという馬だ。この2頭に外から並ぶのが京都マイラーズCを勝ったダノンプレミアム。インに収まったインディチャンプ、その間にクリノガウディーがいる。その直後中団も先行集団の真後ろに馬群を作っている。その先頭のインにダノンキングリー、外にマイル戦で厳しい競馬ながら結果を残すプリモシーン、さらに外にモズアスコット、直後にはマイル戦出走は昨年のこのレース以来となるアルアイン、そのインにGⅠ初騎乗の岩田望来騎手を背にしたレッドオルガがいる。

 

ここでようやく馬群が途切れ、後方勢は2年前のこのレース勝ち馬で、昨年2着のペルシアンナイト、外枠のダイアトニック、エメラルファイトが並び、大外枠のレイエンダ、カテドラル、タイムトリップが続く。

 

前半800m、いわゆる半マイルは47秒2、マイスタイルの作る緩い流れは後半600m、上がり3ハロンの激流を生む。4角手前から残り200mは11秒0。外からダノンプレミアムが先頭に立とうと追い出され、インからグァンチャーレが迫り、逃げるマイスタイルもバテていない。

その先頭集団のなかで抜群の手応えだったのがインディチャンプだった。

ダノンプレミアムとの手応えの差は歴然。馬なりから残り200mで池添謙一騎手が一気に追い出すと、馬が瞬時にギアチェンジ、ダノンプレミアムを瞬く間に突き放した。

 

勝負あり。もはやマイルでこの馬に敵う馬はいないと思わせる、完全無欠のチャンプの走りでゴール板を通過した。

 

2着はダノンプレミアム、3着はマイスタイルを最後に交わしてダノンプレミアムに迫ったペルシアンナイトだった。勝ち時計1分33秒0(良)。

 

 

 

■各馬短評

1着インディチャンプ(3番人気)

 

福永祐一騎手の騎乗停止によって代打騎乗となった池添謙一騎手だが、マイルチャンピオンシップはこれで単独トップとなる最多4勝目。このレースを知り尽くしたジョッキーがマイル王に乗り、完璧なレース運びをする。太刀打ちできるはずがない。インディチャンプは最後にソラを使う癖があるので、ギリギリまで追い出しを我慢し、一気に弾けさせ、後続を置き去りするという騎乗プランは見事だった。

 

2着ダノンプレミアム(1番人気)

 

天皇賞(秋)2着からの距離短縮で結果を出したともいえるが、やはりスピードが勝った馬でマイル戦になると、道中のタメが上手く作れなかった印象。きっちり押さえ込んだ天皇賞(秋)と比べると、終いの弾け方に物足りなさを感じる。流れに乗りやすかった分、消費もそれなりだったようだ。距離適性はどちからといえばマイル寄りなので、マイルでもタメが作れるようになれば、まだまだチャンスは多い。

 

3着ペルシアンナイト(6番人気)

 

レースを使って一変する、この馬のパターン通りの好走。このレースはこれで3歳から連続して1、2、3着。金銀銅パーフェクトは着順が落ちているので陣営にとっては悔しい部分もあろう。しかし、この記録もそうそう作れるものでもなく、舞台適性と底力の証明でもある。

 

 

■総評

インディチャンプはご存知ステイゴールドの子ども。最後にソラを使うあたりはきっちり父の血が遺伝している。走りはどちらかといえば、回転の速いピッチ走法で、器用なギアチェンジが今回も活かされた。ステイゴールドの子どもでこんな走りをする馬というと、ドリームジャーニー、オルフェーヴル兄弟が思い浮かぶ。この兄弟の主戦は池添謙一騎手。インディチャンプと手が合わないはずがない。すでに戦う前から急遽の代打騎乗は成功が約束されていたとさえ思ってしまう。

これで京都のGⅠは2週続けてステイゴールドの血が躍動した。先述したが、マイルは競馬の基礎。テンよし、中より、終いよし。スピードを溜めて瞬時に爆発させる総合力が問われるカテゴリーでステイゴールドが春秋マイルGⅠ制覇のキングマイラーを輩出したのはちょっと意外な感じだが、いかに種牡馬ステイゴールドの血が優秀であるかが証明され、ステイファンには実り多き秋になった。

文・勝木淳

写真・ゆーすけ

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