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雨中に射した頂への光〜2014年・JDD〜

 

南関名勝負第3回は2014年のジャパンダートダービーです。

この年のジャパンダートダービーの注目は何と言ってもハッピースプリント。2001年のトーシンブリザード以来13年ぶりに南関三冠を達成できるかどうかがかかるレースとなりました。

……いや、むしろ三冠馬誕生は『ほぼ間違いない』と思われたと言っても過言ではないでしょう。 

 

ハッピースプリントはホッカイドウ競馬でデビュー後、JRAへ遠征した芝の2戦で5着に敗れた以外はダートでは負けなしの8連勝。それも前年の北海道2歳優駿でJRA勢を下してホッカイドウ競馬に敵なしを示し、更には暮れの全日本2歳優駿ではJpnⅠ制覇──さらには年が明けて南関へ移籍後は南関にも敵なしを示して羽田盃を5馬身差、東京ダービーを4馬身差で圧勝しての二冠達成をしている実績馬でした。

ダートでは南関クラシックの前哨戦京浜盃を除いて7戦で最速上がりと、堂々たる成績で、強豪JRA相手に三冠を達成すべくジャパンダートダービーの舞台へと駒を進め、単勝1.4倍と圧倒的支持を受けました。

 

 

地方からは東海ダービー馬ケージーキンカメ、兵庫ダービー馬トーコーガイア、九州ダービー馬オールラウンドの3頭のダービー馬が出走。

JRA勢からはダートで5戦3勝の戦績を収め、連勝でここへ臨んだカゼノコが2番人気、前走兵庫チャンピオンシップで2着のランウェイワルツが3番人気と、ここまでが単勝一桁台の人気でした。そこに、オープン勝ちのJRAメイショウパワーズ、ノースショアビーチ、フィールザスマートと続きました。

 

台風の影響を受け雨の稍重馬場となったジャパンダートダービー。

スタートでややゴチャつく場面があったものの、ハッピースプリントはこの日も位置を取りにいっての正攻法の競馬で「来るなら来い」と真っ向勝負を挑みます。ノースショアビーチを見ながら好位の3番手。

そのハッピースプリントをマークするのはランウェイワルツとメイショウパワーズ。カゼノコはスタートで挟まれ、1コーナーでは最後方を追走します。

 

3コーナーを前にノースショアビーチが押し出されて先頭、それに手応え十分でついていくハッピースプリント、ランウェイワルツに次いで外を一気に押し上げてきたのがカゼノコ。

直線に入ると満を持して追い出し、今日も強いハッピースプリントを見せて三冠馬への残り400mのカウントダウンと思われました。

しかし……。

 

ラチ沿いを粘るノースショアビーチが渋太く粘り、ハッピースプリントはなかなか抜け出せないままでいました。

それでも吉原騎手の鼓舞に応えて残り100mでようやく先頭に立った……のも束の間、ハッピースプリントに初めての試練が訪れたのです。

 

すぐ外から並んでくるカゼノコとフィールザスマート。

これまで直線で背後から迫られることがなかったハッピースプリントが、ダートで初めて追い比べに持ち込まれた瞬間でした。

必死に踏ん張るハッピースプリント。

秋山騎手の追いに反応して一完歩毎に迫るカゼノコ。

 

1900mを走ってきての、残り100m。

 

 「勝ちたい!」

 

2頭と2人のつばぜり合い。

雨中に散る火花。

精一杯に馬体を伸ばして2頭並んでのゴール。

 

 「どっちだ!!」

 

実況の大川アナは入線後、第一声で全国のファンが抱いた気持ちを発しました。

それくらいの、激戦のゴールでした。

 

写真判定でハナ差出ていたのはJRAのカゼノコ。

ハッピースプリントの三冠達成は文字通りあと一歩のところで阻まれてしまいましたが、勝ったカゼノコが称えられると同時に、自分の競馬をして三冠を掴みにいったハッピースプリントも称えられるほどの走りを見せたことは間違いありません。

 

このレースでひとつ明暗を分けたのは、雨という要素だったのかもしれません。

このレース後、カゼノコが勝ち負けを演じたのはことごとく雨馬場・道悪馬場で、道悪巧者ぶりを発揮していくことになります。

それぞれのレース条件で先頭でゴールするためには馬の力は勿論のこと、当日の体調・馬の気分・騎手の一挙手一投足・馬場状態・更には天候と、多くの要素がひとつのレースの勝者を決めるポイントとなってきます。

競馬にタラレバは禁物と言われますが、もし雨が降っていなかったら……もしカゼノコが挟まれていなかったら……と、決して見ることはできない、存在し得ない別の2014年ジャパンダートダービーを想像してみるのも悪くないかもしれません。

そこには、どんな結末が待っているでしょうか?

 

三冠達成の難しさを思い知らされる名勝負として、まだ見たことのない方には是非とも見ていただきたいレースのひとつです。

文・馬人

写真・ウマフリ写真班

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