ゴールドシップ産駒、待望の初勝利によせて〜サトノゴールド〜

 

2012年の菊花賞勝ち馬・ゴールドシップ。

数々の名勝負を繰り広げた芦毛の人気者は、G1で6勝という好成績を残して2015年有馬記念にて引退。そのまま、種牡馬として第二の馬生を歩み始めた。

 

ゴールドシップといえば、多くの武勇伝だけでなく、須貝厩舎・今浪隆利厩務員から多くの愛情を受けていたことも印象的な競走馬であった。ファンだけでなく、身近にいた人々にも愛された馬。

引退時には、新たなるスター輩出を期待する言葉が並んでいたものだ。

 

初年度の種付け数は約110頭。

一つ下の世代であるエピファネイア(約220頭)、キズナ(約270頭)と倍以上の差をつけられながらも、ある程度「勝負の出来る頭数」を揃えたと言えるのではないだろうか。

父ステイゴールド×母父メジロマックイーンという配合からは、既に先輩であるオルフェーヴルが種牡馬として2頭のG1馬を送り出していた。

 

「種牡馬・ゴールドシップ」にも、私は多くの楽しみを抱いている。

 

 

種牡馬といえば、まずファンをどぎまぎさせるのは「産駒の初勝利」。

リアルインパクトやキズナといった2019年度の新種牡馬たちが着々と白星を積み重ねていくなか、ゴールドシップ産駒は最初の一ヶ月を未勝利で終えた。

 

適鞍を待っていたから。

産駒が少ないから。

ゆっくりと成長を待っていたから。

 

──もちろん理由は様々にあげられるものの、それでも確かな「1勝」が欲しかった。まだ焦る時ではないとわかりつつも結果が欲しくなるのは、人の性なのかもしれない。

ゴールドシップに似た産駒の登場を、少しでも早くに見届けたかった。

 

一方で、どんな馬がゴールドシップ産駒の初勝利をあげてくれるのか?というワクワクした気持ちもあった。

また、あんなに愛される馬が登場すれば……と。

 

 

7月14日。

函館でデビューする幼き2歳馬たちのなかに、サトノゴールドはいた。

 

その「ゴールド」という名前の通り、ゴールドシップの血が流れる若駒だ。ゴールドシップ産駒として7頭目のデビューとなる彼は、須貝厩舎・今浪隆利厩務員という「チーム・ゴールドシップ」のもとで育成・管理されていた。

 

 

ゴールドシップのデビュー戦は2011年の7月、函館。

その父に呼応するかのように、サトノゴールドに用意された舞台は7月、函館の新馬戦。

さらには、同じく芝1800m戦というおまけつきだ。

あまりにも出来すぎた条件が揃っていた。

 

父に並べるか?

父を超えられるか?

まずは無事の帰還を願いつつも、私は大きな期待を寄せずにはいられなかった。

きっと、多くのゴールドシップファン・ステイゴールドファンがその走りに注目していたことだろう。

こんな「出来すぎた勝利」が見られたら、どんなに贅沢だろう、と。

 

 

ライバルと目される馬はプントファイヤー。

父は菊花賞馬エピファネイアで、新種牡馬同士の対決でもあった。

 

サトノゴールドの鞍上は武豊騎手。

ゴールドシップとはコンビを組んだ事のない騎手ではあるが、互いに一線級で活躍してきただけに、対戦経験は16度ある。

ゴールドシップのデビュー戦では1番人気の「サトノ」ヒーローに騎乗して6着。

その後も2012年には皐月賞・ダービー・神戸新聞杯・有馬記念にて、2013年には阪神大賞典・天皇賞春・宝塚記念・ジャパンカップ・有馬記念にて、2014年には阪神大賞典・天皇賞春・宝塚記念・有馬記念にて、2015年には阪神大賞典・天皇賞春・宝塚記念にて、対戦を重ねてきた。

そのなかで武豊騎手がゴールドシップに先着したのは、2度の天皇賞・春と宝塚記念の計3回のみ。

 

ゴールドシップの強さを、間近で見てきた騎手だとも言えるだろう。

 

 

サトノゴールドは、馬体重は458キロと、父のデビュー時体重502キロよりは50キロ近く軽量ながらも、十分に見栄えの良いハリのある馬体でパドックに登場した。

 

単勝人気は、1番人気。父の産駒として、初めての1番人気だった。

父ですらデビュー戦は2番人気で、初めての1番人気は2戦目だったことからも、その期待の高さは伺えた。

 

 

毛色は、両親譲りの芦毛。

 

母のマイジェン(My Jen)はアメリカのG2を勝利している実力馬だったが、日本で産んだ競走馬は4頭デビューしてJRA未勝利と苦戦していた。そのうち3頭がディープインパクト産駒と、期待は受けつつも結果がでないというもどかしい日々が続いていたように思える。

そんな母からの、5頭目のデビューとなるサトノゴールドには、そうした流れを断ち切る活躍も期待されていたかもしれない。

 

 

ゲートが開くと、サトノゴールドは好スタートを決める。

 

現役時代は出遅れに悩んだゴールドシップの血を感じさせないスムーズなスタート──とは言いつつもゴールドシップ自身もデビュー戦は出遅れてはいないのだが──をきめたサトノゴールドは、そのままスッと好位にとりつける。

 

そのままゆったりとしたペースを差のない二番手で追走し、4コーナーで加速するという優等生な競馬を展開。直線では2番人気のプントファイヤーと馬体をあわせたものの、すぐに突き放すと、勝利を収めた。

道中は本気で走っていないような幼さ・難しさも垣間見せたが、それでもこの勝利はゴールドシップファンを歓喜させ、安堵させるものだったのではないだろうか。

 

 

芦毛馬で、非常に似通ったデビューを迎えたゴールドシップとサトノゴールド。

 

ゴールドシップのデビュー戦勝ち時計は1:51.2で上がり3Fは34.9。

サトノゴールドは1:54.1で上がり3Fは35.1。

父の2戦目は9月のコスモス賞だったが、サトノゴールドは果たしてどうなるのだろうか。

 

G1馬の父を追いかけ、ゴールドシップ産駒たちの先頭を駆けてゆく。

これからどんどん活躍をしれくれるのだろうか。壁にぶつかるのだろうか。

2勝目をあげる馬は、どんな馬だろうか。芦毛?それとも別の毛色?それともサトノゴールド?

──ああ、競馬というのは見方ひとつで、なんと豊かな気持ちになれる競技なのだろうか。

一度引退した馬の夢を、また受け継ぐものが現れる。

父であるゴールドシップの果たせなかった夢を掴み取る馬が出てくる可能性だってあるのだ。

 

そんな豪勢な夢を、たった一度の白星で感じさせてくれるのも、また競馬だ。

 

それでもまずは、声をかけたい。

ゴールドシップ、そしてサトノゴールドへ。

初勝利、おめでとう。

 

文・葵ゆう子

写真・アカネノユメ、@pfmpspsm、あやか、がんぐろちゃん

 

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