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[重賞回顧]第24回秋華賞(GⅠ)~秋に咲く、一輪の花~

 

コスモス、りんどう、百日草に金木犀、そして、彼岸花、サフラン、秋明菊。

秋に咲く花には品を感じさせるものが多く、いずれ訪れるであろう冬を前にした寂寥を美しさで紛らわせてくれる。

希望に満ちた季節が春ならば、秋はどんな季節なのだろう。

絶頂の夏を終え、秋は希望と絶頂の終着地。一年の大団円であろうか。

 

2019年牝馬クラシックロードの終着地点、秋華賞がやってきた。

今年の牝馬クラシックは2歳冬の女王決定戦から桜の女王、樫の女王と、刹那的な戦いだった。

ダノンファンタジーは3歳クラシックは桜4着樫5着、ダノンファンタジーに2歳冬は屈したクロノジェネシスは桜3着樫3着、ビーチサンバは桜5着樫15着、シェーングランツは桜9着樫7着、阪神JFから秋華賞までのGⅠすべてに出走した馬はこの4頭だけ。

ほかに桜2着樫12着のシゲルピンクダイヤ、残念ながら出走を取り消したメイショウショウブは阪神JF6着樫17着、樫2着のカレンブーケドール、樫6着のシャドウディーヴァ、樫9着コントラチェック、樫16着フェアリーポルカ。

桜の女王グランアレグリア、樫の女王ラヴズオンリーユーも秋の終着地点にその姿はない。

長く厳しいクラシックロードを戦い抜いた3歳牝馬17頭によるその大団円、秋華賞がはじまる。

 

 

京都競馬場のスタンド前から飛び出す17頭のスタートはほぼ一斉。

外枠ながらハナを奪いにいくコントラチェックに応戦したのはクラシックロード皆勤のビーチサンバ。

なにかが足りないと感じた福永祐一騎手、覚悟の先手主張だった。

この2頭が3番手以下をやや引き離して1角を迎える。

 

3番手のインに収まったのはダノンファンタジー。

こちらもやや前目の位置取りに最後の一冠への執念がみえる。

その外に春はクラシック出走にあと一歩及ばなかったが、紫苑Sを勝って秋華賞出走を決めたパッシングスルーがつける。

直後にはインからブランノワール、クロノジェネシス、レッドアネモス。

先行集団から一歩下がって中団にカレンブーケドール、フェアリーポルカ、シャドウディーヴァが続き、後方に夏の上がり馬ローズテソーロ、エスポワール、サトノダムゼルと続き、春と同じく末脚にかけるシゲルピンクダイヤ、悲運の姉の分まで走るシングフォーユー、シェーングランツ、トゥーフラッシーと続く。

 

11秒台後半が続く淀みない流れのなか、3角手前1200m通過地点でビーチサンバが息を入れようとペースを落とした。

このペースダウンに離され気味だった3番手以下が一気に差を詰める。

ビーチサンバ、コントラチェック、ダノンファンタジー、パッシングスルーと前は一気にひと塊になり、その背後を狙ってクロノジェネシス、カレンブーケドールが追って勝負は4角を迎える。

 

振り切りにかかるビーチサンバ、並びかけるダノンファンタジー、どちらも残された最後の望みに勝負をかける。

その外を回るパッシングスルーのコーナリングの一瞬のスキを見逃さなかったのが、クロノジェネシス。

同じスペースを狙うカレンブーケドールに進路を譲るまいと一気にスパートをかける。

インに押し込められながらダノンファンタジーを弾くように前に出るカレンブーケドールが、先を行くクロノジェネシスをひたすらに追う。

 

逃げるビーチサンバを捕らえ先頭に躍り出たクロノジェネシス、追うカレンブーケドール。

粘るビーチサンバの外を強襲するシゲルピンクダイヤとシャドウディーヴァ。

ゴールまで続く厳しい叩き合いを制したのはクロノジェネシスだった。

カレンブーケドールが2着、3着には最後のシゲルピンクダイヤがあがった。

勝ち時計1分59秒9(やや重)。

最後の一冠はクラシック2戦とも3着だったクロノジェネシスが手中に収めた。

 

 

 

■各馬短評 

 

1着クロノジェネシス(4番人気)

 

桜も樫も3着とあと一歩、なにかが足りない競馬が続いたが、馬体重430キロ前後の小さな馬だけに体重減を気にしながらの調整だったことを踏まえたのか、今回は思い切ってぶっつけ本番のローテーションを選択、馬体重は20キロ増と夏の成長そのままに出走できた。

9月が入念に調教、直前も1週前に7ハロンから一杯に追うなど課題を克服した。

レースでは4角でパッシングスルーとダノンファンタジーとの間のスペースに瞬時に飛び込む操作性の高さを証明した。

 

2着カレンブーケドール(2番人気)

 

オークスでラヴズオンリーユーに肉薄した力をこの秋も存分に発揮した。

先行争いから引いてオークスよりも控えた位置になりながらも、4角ではしっかりと勝負圏内に取りついた。

惜しいのは4角でクロノジェネシスに狙った進路を奪われ、内に押し込められるシーン。

わずかではあるが、瞬時の動きで見劣った結果がクロノジェネシスとの着差だったことを考えると、改めてその実力は互角だったと考えていい。

 

3着シゲルピンクダイヤ(10番人気)

 

距離とコースへの適性に疑問があったが、それを払拭する走りを披露。

距離に対する不安には控えて前半は楽をさせる作戦を選択。

ハイペースの流れが向いたことは確かだが、短い内回りの直線でも3着争いを制したことは今後につながるものだった。

 

 

■総評

 

秋に咲き誇ったのはクロノジェネシス。

4角での判断も見事であったが、この馬、実はスタートの一完歩目はやや遅れ気味だった。

内外の馬に前に入られ、位置を下げそうになったところをちょっと強気に主張し、低い姿勢から先行態勢をしっかりと取った北村友一騎手の御法は見逃せない。

あそこで一歩引いていれば、インから4角であの位置は取れなかった。

勝つにはあの4角の攻防を制する必要があったわけなので、それを考えればスタート直後に勝利へのキーポイントがあった。

 

秋の花は少しばかり寂しく儚げだと言うが、クロノジェネシスは決してそんな刹那な女王ではない。

同世代のラヴズオンリーユーとの再戦も含め、まだまだそのビクトリーロードは続いていくだろう。

 

 

文・勝木淳

写真・ゆーすけ

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