[インタビュー]ヴェルサイユファーム代表が語る、タイキシャトル・ローズキングダムの「たてがみ被害」について

2019年9月15日、競馬ファンに衝撃が走った。

 

現役時代にGⅠを勝利し、現在は引退馬として余生を過ごしているタイキシャトル、ローズキングダムのたてがみが相次いで切られるという事件が発生した。さらに立て続けに、他牧場のウイニングチケット、ビワハヤヒデも同様の被害を受けたことが判明し、社会問題にも発展している。

 

そこで最初に被害にあったタイキシャトルとローズキングダムの2頭を繋養しているヴェルサイユファーム岩崎崇文代表にお話を伺った。

 

 

■2人でチェックしているはずなのに……

 

2頭のたてがみが切られる事件が発生したのは、9月13日の金曜日。

翌日の土曜日に、岩崎さんはもう1名のスタッフと2人でブラッシングと艶出しスプレーをかけるという作業を行なっていた。しかし、なぜだか分からないが2人ともそれに気がつくことはなかった。

 

「2人でチェックしているはずなのに、何で気がつかなかったのかな……」

 

岩崎さんは首を傾げる。今でもスタッフと、その「なぜ」が話題にのぼっているそうだ。

 

実際にたてがみが切られていることに気付いたのは、事件から2日が経った日曜日のこと。その日はスタッフが休日だったため、岩崎さんは1人でタイキシャトルの手入れを行なっていた。だが、その時「あれっ?」とある異変に気がつく。

たてがみの一部がまっすぐに切れているのだ。

慌ててスタッフにたてがみを切ったかと確認してみたという。

 

しかし帰ってきた返事は「切るわけがない」という当然の答えだった。

 

 

 

この出来事はあまりに衝撃的すぎて、ローズキングダムまでもが被害にあっていることに、その時は気づかなかったと当時を振り返る。

 

すぐさまNPO法人の引退馬協会に連絡、被害届の提出とSNSで注意喚起する運びとなった。

 

ヴェルサイユファームでは見学者に対し、前日までに電話予約をしてもらっていたが、予約に必要なのは「見学者の名前」と「時間」の2ポイントのみ。見学に来た人に付きっきりで対応するのは難しいのが現状だ。

実際に事件があった13日にも、スタッフは近くで作業をしていたが、牧場は広大で道路を挟んで放牧地があったりする関係上、場内にいても目が行き届かず、気づくことはできなかった。

 

ローズキングダムのたてがみを見ると、一番上の毛をあえて残して内側から切るという手口がとられている。これは素人らしからぬ方法で、たてがみを切ることに慣れている人物の可能性が高く、悪質性も高いとのことだ。

 

 

そこでこうした事態の抑制にもなり、万が一このような事件があっても今回のように探さなくてもよくなるといった理由から、場内全てを監視できる防犯カメラを設置することを決めた。

引退馬の余生を守るための、苦渋の決断である。

 

 

 

■以前は、命の危険すら感じるほど暴れていたローズキングダム

 

ファンとして、最も気になるのは2頭の現在の様子についてだろう。岩崎さんは次のように語った。

 

「馬体自体を傷つけられたわけではないので、変わりはありません。ただ、警察の出入りなどがあるので、いつもと違う雰囲気を感じ取っているだろうなと思います」

 

それを聞いてまずは一安心。

しかし、もし馬が暴れてしまっていたら……。

 

ローズキングダムがヴェルサイユファームに来たのは昨年の10月だった。当時のローズキングダムは怪我をしたショックなのか、ビクビクした様子でブラシも当てられず、馬着を着せたり脱がしたりもできないほど。時には命の危険すら感じるほど暴れ、岩崎さんたちはほぼ触れない状態だったという。

 

そこからの並々ならぬ苦労があって、今では見学の人が近くに来ても問題ないほどにまでなったのだ。

そのお話を聞けば聞くほど、どうしてこのような犯行に及んだのかと、憤りを感じる。

 

引退馬がこうして余生を過ごせているのも、ファンやサポートしてくれる人たちの支援があってのこと。そうした人たちのためにも今後については、見学を再開しようと考えてはいるが、それには防犯カメラの設置が必須条件だ。その資金はクラウドファンディングで集めることが検討されており、さらなる支援が必要となってくるだろう。

 

最後に岩崎さんにファンにどのようなことを求めるかについて聞いてみた。

 

「たてがみを切ったり、馬に危害を加えるようなことはしないでほしいが、ヴェルサイユファームではそれ以外であれば、触っていただいても大丈夫です」

 

その一方で「このようなことが起これば見せることができなくなってしまう。1人の行動によって本当のファンの皆さんに迷惑がかかってしまう」ということも付け加えた。

 

私たち競馬ファンは引退後でなければ、こうした名馬たちに会うことはできない。

そして牧場の厚意があってこそ、見学させてもらっているということを忘れてはならない。

競馬ファンとして失格とも言える行為を働いてしまった犯人が一刻も早く見つかり、再び牧場に平穏な日々が訪れることを、一競馬ファンとして心から願っている。

 

文・三木俊幸

写真・ヴェルサイユファーム、かず、Horse Memorys

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