7年の時を経て~岩手競馬、腐れ縁のベテラン2頭のたたかい~

因縁のライバル……とまでいかないが、腐れ縁というような関係の馬はいるものだ。

今回の記事でいうと、タイセイファントムイーグルカザンの2頭がそれにあたる。

その2頭が出会ったのは、2010年の8月8日だった。

函館2歳ステークス。

芝の1200mで争われる、世代最初の2歳戦だ。

仕上がりの早い馬たちが集まるとされているレースだが、その年のメンバーは一味違った。

7歳で目黒記念の5着に食い込んだトラストワンをはじめ、3歳春にはダービーにエーシンジャッカルが、桜花賞にマイネショコラーデが出走と、2歳限定戦に留まらない活躍をする馬が集まっていた。

そのレースで5着になったのがタイセイファントム、11着に敗れたのがイーグルカザンだった。

奇しくもこの2頭は、芝の重賞に出走していながらもその年のうちに芝レースに見切りをつけダート短距離戦に出走するようになる。

このレースでの2頭の間には0.8秒という差があった。

それから、数年間の時が経つ。

同期のオルフェーヴルが三冠を達成し、凱旋門賞制覇で連続して2着という結果を残していた。

タイセイファントムは、ユニコーンSやカペラS・サマーチャンピオンなどダート重賞戦線で活躍。戦ってきた相手もスノードラゴンやグレープブランデー、ベストウォーリアといったダート短距離界の実力派揃いだった。自身も2014年の3月にオープン競走で勝利を収めていた。重賞では勝ち切れないものの、存在感のあるダート馬として成長を遂げていた。

 

イーグルカザンは1年近い長期休養を挟みつつ、条件戦にチャレンジ。

好走はするものの、オープンクラスまでは一歩届かない条件馬として歯がゆい思いが続いていた。武器である末脚を発揮して2着や3着はあれど、なかなか1着を取れない勝負弱さが課題となっていた。

 

2頭が再開したのは、2014年の12月14日、中山競馬場。

しかし、出走するレースは違った。

イーグルカザンは1000万下の条件戦、タイセイファントムは重賞・カペラS。

タイセイファントムは2年連続のカペラS挑戦で、何とか重賞制覇を、と意気込んでいた。

イーグルカザンは6戦連続で掲示板を外し、そろそろ限界かという声も聞こえていた。

結果はイーグルカザンは白星をあげ、タイセイファントムは8着に敗れる。

 

しかしレースこそ違えど同じ中山ダート1200m戦、走破タイムはイーグルカザンが1:11.4、タイセイファントムは1:11.3と、タイムではタイセイファントムが若干上回っていた。

さらに時は流れ、2017年、春。

条件戦での二桁着順が目立つようになったイーグルカザンは、新たな活躍の場を求めて岩手競馬へと移籍。移籍初戦で約2年4ヶ月ぶりの勝利をあげる。この時、9歳であった。

2頭が再開したのはその夏、盛岡競馬場で開催された交流重賞・クラスターCの日だった。

中央から遠征してきたタイセイファントムは7番人気、地元イーグルカザンは9番人気。

レース開催日は2017年8月15日。

函館2歳S以来、実に7年以上の時が過ぎていた。

久々の邂逅を果たした2頭。気が付けば互いに年を重ねていた。

既に函館2歳Sで走った戦友は、2頭を残して全て引退──さらには、その子供らがデビューを果たしていた。

タイセイファントムはデビュー60戦目、イーグルカザンはデビュー56戦目。2頭合わせて100戦を超える死闘を繰り広げて、岩手の地に辿り着いたことになる。

レース出走馬のなかで最高齢にあたる2頭は、6着・7着でゴール。

ここでも1.2秒、タイセイファントムが先着していた。

2頭の次なる再会は、思いのほか早かった。

タイセイファントムが2017年秋に岩手競馬へ移籍をしたのだ。

その移籍後、記念すべき初戦に選ばれたのは2017年11月5日、絆カップだった。

結果はタイセイファントムが優勝、イーグルカザンは14頭中最下位に沈んでいた。

 

──なかなか、勝てない。

振り返ればこれまで、イーグルカザンは一度もタイセイファントムに先着していなかった。

それでも、どうにか。このままでは引退できない。

9歳馬は、挑戦を続けた。

 

次走に選ばれたのは白嶺賞。

鮮烈な移籍後のデビューを果たしたタイセイファントムは単勝1番人気に推されていた。単勝オッズは、なんと1.4倍。圧倒的な人気だった。

対するイーグルカザンは6番人気で、単勝オッズは21.5倍という低調なもの。

観衆からの評価の差は明白だった。

しかし結論から言うと、その2頭がゴールした際、タイム差はなかった。

年齢を感じさせない、大接戦のゴール前。

イーグルカザン、1着。

タイセイファントム、3着。

イーグルカザンの意地が、ついに先着を実現したのだ。

あがり最速の末脚を発揮し、イーグルカザンがタイセイファントムを差し切っていた。

次に2頭が同じレースに出走したのは年明け、春の赤松杯。

2頭は10歳馬になっていた。

 

タイセイファントムが3着でイーグルカザンが4着と、今度はタイセイファントムに軍配が上がる。

続く5月のシアンモア記念もタイセイファントムが2着、イーグルカザンは6着。

さらに2週後のスプリント特別では10歳馬のワンツーを決める。結果は2馬身半ほどタイセイファントムが先着。

しかしその2週後には早池峰スーパースプリントでイーグルカザンが5着、タイセイファントムが7着とイーグルカザンが先着。またも雪辱を晴らす。

7月に入って栗駒賞、今度はタイセイファントムが2着でイーグルカザンが4着──。

 

2頭の大ベテランは、勝ち負けを繰り返しながら、今もなお、同じ舞台で走り続けている。

腐れ縁の、ベテラン2頭。

 

どうか無事で元気に走り続けながら、岩手の地で観衆を魅了し続けてほしい。

たとえレースで最先着でなくとも、大ベテラン同士の腐れ縁が続く事を、信じて。

我儘を言えば、出来るだけ沢山、2頭の「意地の張り合い」を見ていたい。

引退するとき、どちらが多く先着しているのかを、楽しみに数えながら……。

そして引退後、2頭が満足そうに競馬場をあとにするのを、拍手で送り出したいのだ。