[インタビュー]「馬」「馬文化」「アート」をつなぐイベント『UMARTs』とは?

突然ですが、皆さまは東京競馬場内のJRA競馬博物館で開催されるイベント『UMARTs』をご存知ですか?

武蔵野美術大学とのコラボで実施されている、2018年で第6回目を迎える美術イベントです。

今回はその『UMARTs』について、お話を伺ってきました!

■UMARTsってどんなイベント?

●これまでの『UMARTs』について

ウマフリ編集部:

さっそくですが、このイベントの概要や歴史について教えてください!

広報班メンバー:

「UMARTs2018 うまからうまれるアート展」は、公益財団法人馬事文化財団と武蔵野美術大学の博学連携から生まれた、「馬」と「馬文化」の魅力を再発見し、若きアーティストとキ ュレーターから新しいアートの楽しみ方の提案の場となるアートプロジェクトです。

今回で 6 回目となる本展では、武蔵野美術大学に所縁のある若手アーティストたちが、馬や、馬に関連する美術作品などからインスピレーションを受け、制作した作品を、東京競馬場内 の JRA 競馬博物館(府中)にて展示します。

また、馬や馬文化をもっと身近に感じてもらいたいという思いから、会期中に馬や馬文化により親しめる 3 つの造形ワークショップを実施します。

さまざまなアート作品やワークショップを通して、「馬」と「馬文化」の魅力をお楽しみください!

ウマフリ編集部:

なるほど。そもそもこのイベントを始めたきっかけはなんでしょうか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

総合ディレクターである私(杉浦幸子教授)が、1990年に大学を卒業して就職したJRA日本中央競馬会で、畑山光伸さんに『職場の上司』として出会いました。

その後JRAを退職していくつかの仕事を経験したあと、2012年に武蔵野美術大学の教員となりましたが、同じ年に、畑山さんが、公益財団法人馬事文化財団の理事長に就任されました。

それぞれが新しい環境で芸術文化に関わる活動を始めた時に、「馬」「馬文化」「アート」という異なる領域をつなぐプロジェクトをしよう、ということとなり、2013年にUMARTsが生まれました。

ウマフリ編集部:

人と人との縁ということですね。

そのイベントをあえて「競馬場」で開催しようと思った理由はなんですか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

このプロジェクトは、JRA日本中央競馬会の外郭団体の一つ、公益財団法人馬事文化財団との共催で行われ、一年ごとに、財団が運営している、横浜・根岸の「馬の博物館」と、東京競馬場内の「JRA競馬博物館」で交互に実施しています。

今年は、順番的にJRA競馬博物館での開催となりました。

 

あえて「競馬場」で開催したのではなく、JRA競馬博物館が東京競馬場内にあった、というのが正しいです。

ということで『競馬場ありき』ではないのですが東京競馬場内にある博物館ということで、芸術文化に関心がない人も、まずは「競馬」への興味で入館し、気づいたらアートに出会っていた、という出会いを生み出せるという点で、競馬場内にある博物館としての利点が大きくあると考えています。

また、競馬場内の遊び場に来る子どもたちを対象としてワークショップを行うことができる、という利点もあります。

ウマフリ編集部:

確かに「競馬」をきっかけにアートと出会うというには絶好の場所ですね。

 

運営についても聞かせてください。

これまでの先輩方が得てきた「実感」「経験」などはありますか?

UMARTs2017 デザイン班 武藤亜嵐さん:

僕は乗馬をやっていたことがあるのですが、競馬場に行ったこともなければ、馬に関する知識もあまりありませんでした。

ですが、UMARTsに参加したことで、初めて競馬場に訪れ、競馬場の雰囲気を直接体感でき、また馬への知識が増えました。それからは自分にとって、馬の存在が近くなったような気がしています。

あと馬に関するもの(馬のグッズだったり、馬柄のアイテムだったり……)に対して、敏感に反応するようになりました(笑)

 

「経験」としては、UMARTsのプロジェクトを通して杉浦先生や様々な大人と関わることで、手紙の書き方やメールの送り方や、作家さんとのコミュニケーション、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)を学びました。この経験は普段の生活ではなかなか学ぶことのできない貴重な経験でした!!

UMARTsで得た経験や知識が他のプロジェクトや授業でとてもいかされています。

●2018年度の『UMARTs』について

ウマフリ編集部:

2018年度の『UMARTs』についても聞かせてください!

実行委員会の人数や参加される方々を含めると、何名くらいの方々が携わっているイベントですか?

広報班メンバー:

総合プロデューサー杉浦幸子教授のもと、今年度のUMARTs2018に参加している芸術文化学科の学生は15名。

全員が一年生です。

また、参加アーティストは18名になります。

加えて、芸術文化学科の教員である楫義明教授・西中賢教授・米徳信一教授にも、展示やグラフィック、映像のデザイン面で協力していただいています。

ウマフリ編集部:

今年のテーマはなんですか?

広報班メンバー:

UMARTs2018全体に関しては特にテーマはありません。

ワークショップは「つくって ウマれる!」をテーマとしています。

ウマフリ編集部:

今年の開催にあたって、今までと違う点や注目してほしい点はありますか?

広報班メンバー:

2018年で6回目となるUMARTsですが、初のテーマソングを制作しました!

作詞はUMARTs2018に参加している総務・経理班の守時茉耶さん。

作曲は広報班の小林果奈さんの高校の同級生で、今は国立音楽大学1年生の金山優羽さんです。

 

ついつい口ずさんでしまうような明るく楽しい素敵な曲になりました。

是非、曲を覚えていただいた、一緒に口ずさんでいただきたいです!

 

現在、米徳信一教授にご協力いただきPVを制作しています。YouTubeにアップする予定です!

ウマフリ編集部:

聴くのを楽しみにしています!

今回の開催に向けて、準備期間はどれくらいでしたか?

広報班メンバー:

UMARTs2018の発足は4月中旬でした。発足から開催まで約4ヶ月です。

準備期間は短く忙しい毎日でしたが、たくさんのことに挑戦することができて、とても充実していました!

ウマフリ編集部:

開催の準備にあたって、苦労したことや嬉しかったことはありますか?

広報班メンバー:

今年度の参加者は全員1年生なので、学校生活も慣れない中、初めてのことばかりで大変でした。

ですが、デザイン班、広報班、展示班、ワークショップ班、総務・経理班、記録班、それぞれの班が計画していたことが、本番が近づくにつれ少しずつカタチになっていくのが目に見えてきた時、達成感と喜び、そしてやりがいを感じました!

ウマフリ編集部:

ワークショップ「つくって ウマれる!」について教えてください。

ワークショップ班メンバー:

UMARTs2018「つくって ウマれる!」は、アートを通じて「馬」と「馬文化」をもっと知ってほしい、感じてほしい──そんな想いから武蔵野美術大学の学生が3つのワークショップを企画しました。

 

1.「つくってトコトコ!UMARTsこまくらべ」

東京競馬場から徒歩5分ほどにある、府中・大國魂神社で千年前から良い馬を選び朝廷に献上するために行っている「競馬式(こまくらべ)」からインスピレーションを得ました。

紙を切り、トコトコ走る可愛い馬を作って特製の坂で「こまくらべ」をします!

 

2.「願いをこめて〜うまもり&張り子うま〜」

「うま」と「おまもり」を合体させた「うまもり」という、うまの形の張り子です。

中に鈴を入れたり、色を塗り自分だけの「うまもり」を作ります!

 

3.「作って、つけて、応援しよう!ミサンガ作り!」

馬に乗るジョッキーが着ている勝負服に使われている13色の糸でミサンガを作ります。

勝負服と同じ色のミサンガをつけて馬を応援してもらいたいです!

ウマフリ編集部:

展示は今回で6回目とのことですが、初回と比べると展示内容や周囲の反応に変化はありますか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

「UMARTs」という言葉自体、新しい造語だったので、最初は「これはなに?」という反応ばかりでしたが、6年続けることで「UMARTs=馬とアートのプロジェクト」というブランドが生まれ、認知度が上がってきたと感じます。

 

展示内容は毎回の作品次第ですが、ポスターちらしといった広報物やワークショップは、回を重ねるごとにブラッシュアップされて、バラエティーに富んだものになってきています。

ウマフリ編集部:

なるほど!ブラッシュアップされていくのは素敵ですね。これからも毎年、注目していきたい気持ちが強まりました。

イベント・展示を続けてきてよかったと思うのはどんな時ですか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

UMARTsに来てくださった方々から、馬の魅力に気づいた、もっと馬のことを知りたい、馬をきっかけに現代アートに親しめた、などと言っていただけた時や、作家さんに創作や展示の機会を喜んでもらえた時に、続けてきてよかったと思います。

ウマフリ編集部:

イベントは今後も続けていく予定ですか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

馬事文化財団の皆さんとのご相談になりますが、できれば10回までは続けたいと思っています。

■馬とアートについて

●アーティストな方々にとっての「馬」について

ウマフリ編集部:

続いて「馬とアート」について教えてください。

アーティストの方々にとって「馬」とは魅力的な芸術の対象物に映るものですか?

UMARTs2016参加アーティスト 北嶋勇佑さん:

僕はUMARTs2016に参加させていただきました。

いままで猫や犬、小動物、自分より大きな馬を描いたことはなかったのですが、UMARTsに参加させていただいて自分より大きな動物を描く、というキッカケをいただきました。

特に競馬でレースを終えたばかりの馬の躍動感、生命力にとても魅力を感じました。モチーフのひとつとして、とても魅力的だと思います。

ウマフリ編集部:

みどころにある「馬と馬文化の魅力」とはどんなものとお考えでしょうか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

「馬」自体の美しさや儚さといった魅力があげられます。

また歴史的に見て、アート作品が生まれ出る源泉の一つが、長い間私たちの生活を支えていた「馬」である、ということを、多くの人に知ってほしいと思っています。

●『馬と美術の歴史』について

ウマフリ編集部:

馬は美術のテーマとなってきた歴史があると思うのですが、代表的なものを教えてください!

武蔵野美術大学・杉浦教授:

馬に関連する作品としては、弥生時代の馬型埴輪、ギリシャ・パルテノン神殿の馬のレリーフ、厩図屏風、ダヴィッド、ジェリコー、ドガ、マイブリッジ、坂本繁二郎、山口晃、天野喜孝などがあげられます。

ウマフリ編集部:

おすすめの「馬が題材の美術作品」はありますか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

ダヴィッドの〈ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト〉には、馬のエネルギーと美しさがダイナミックに表現されていると思います。

ウマフリ編集部:

馬とアートの今後の可能性について教えてください!

武蔵野美術大学・杉浦教授:

作家さんと「馬」の出会いが増え、彼らが「馬」の魅力に気づけば、作品にも馬が取り上げられる可能性が高まると思います。

可能性を広げるため、そうした出会いの場を、これからもっと作っていきたいと思っています。

ウマフリ編集部:

美術鑑賞の経験が少ない私にむけて、鑑賞の手引きとなるような、今回の展示の鑑賞のポイントを教えてください。

展示班メンバー:

この展覧会は、18人のアーティストの作品によって構成されています。

そのため、18人それぞれの馬への関心、解釈、表現を見ることができます。作品のジャンルも絵画作品から工芸作品まで幅広いため、普段美術館などへ行かない方でも見やすい展覧会です。

 

日頃、馬やアートに触れる機会のない方にこそ、ぜひ、共感できる作品やお気に入りの作品を見つけていただきたいです。

また、ここまで馬を取り上げた展覧会は珍しいかと思います。馬好きの方にもぜひ来ていただきたいです。

●アーティストの方々について

ウマフリ編集部:

写真、絵画、立体造形などジャンルは多岐にわたるかと思いますが、展示ではどういった作品を見ることが出来ますか?

広報班メンバー:

日本画、油絵、版画、写真といった平面作品、彫刻、木工、金工、ガラス、陶磁、テキスタイルなどの立体作品を18点展示しています。

ジャンルの幅広さはもちろんのこと、馬や鞍、馬券、馬糞など作品のモチーフも様々です。

それぞれのアーティストが感じた馬や馬文化の魅力の違いも楽しんでいただけると思います。

ウマフリ編集部:

全体を10とした時のジャンルのそれぞれの割合も教えていただけると嬉しいです。

広報班メンバー:

およそ平面4、立体6の割合です。

ウマフリ編集部:

参加作家さんの中には日頃から馬に関する作品を制作されている方もいるのでしょうか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

日頃から「馬」だけをテーマにした制作をしている作家さんは少ないですが、UMARTs2013-2014に参加された田畠由希子さんは、主に馬をテーマに制作しています。

ウマフリ編集部:

制作過程は作家さんそれぞれ違うと思いますが、制作過程で馬に直接触れたりといったこともあるのでしょうか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

UMARTsでは、作家さんが制作に入る前に「馬を五感で感じる1日」として、馬に触れたり、乗ったり、間近に馬と出会うプログラムを実施します。

ウマフリ編集部:

それは素敵ですね!

展示を通して、どういったことを伝えたいですか?

武蔵野美術大学・杉浦教授:

本展覧会で展示されている18作品には、それぞれのアーティストにとっての「馬」が映しだされています。

 

生物としての馬から、競馬場の躍動感溢れる馬、希望の象徴の馬、哲学から連想された馬、といった具合に、展示室には18頭の異なる世界観を持つ馬がいます

来場された方々に、それらの作品に出会い、自分の中の「馬」を新鮮に見つめ直し、馬への想いをより深めるきっかけの一つとして、楽しんでいただきたいです。

そして、現代社会で人々から遠ざかった馬が、もう一度私たちにとって身近な存在になるきっかけの一つになれば、嬉しいと思います。

ウマフリ編集部:

なるほど!

展示の成功を応援しています!

2018年度の展示は8月1日~9月1日の1ヶ月間

ワークショップは8月4日・8月5日の11時~16時半で参加は無料ですね。

ぜひ足を運んでみたいと思います!