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[レース回顧]淀短距離ステークス(L)~スプリント界に新星現る~

 

昨年から始まった「リステッド競走」

まだ耳慣れない方も多いかもしれないが、簡単に説明すると、「重賞競走以外のオープンレースの中での中で、より質の高い競走」である。

 

実際、過去の淀短距離ステークスの勝ち馬からはセイウンコウセイ(2017年)、ファイングレイン(2008年)の2頭が、その年の高松宮記念を制している。

古い話で恐縮だが、1984年に制したニホンピロウイナーは、同年のマイルチャンピオンシップをはじめG1レースを3勝した。

 

今年の出走メンバーは阪急杯(G3)など重賞4勝馬のスマートオーディン、富士ステークス(G3)など重賞2勝馬ロジクライ、アーリントンカップ(G3)を制したイベリスなどが出走。

その中で1番人気に支持されたのは京阪杯(G3)2着のアイラブテーラーだった。

京都コース3戦2勝の実績と、前走・京阪杯の内容が良かったこともあり、圧倒的な支持を集めていた。

2番人気は初めての芝だった阪神カップ(G2)で7着のシヴァージ。3番人気には京阪杯3着のカラクレナイが続いた。

 

 

■レース概況

 

ゲートが開いたが、スマートオーディンが大きく出遅れ、ハッピーアワーも出遅れる。

ラブカンプーが先頭を主張するが、外からジョーカナチャンが交わして先頭に立った。そこにイベリスが続き、外からきたカラクレナイと3番手グループを形成。

 

ややあって、スタートはまずまずだったアイラブテーラーが外から上がっていった。

一方シヴァージは前が狭くなったのか、後方に下がる。ロジクライは中団の外。離れた後方にはエイシンテネブとスマートオーディンが続いた。

 

前半600mの通過タイムが34秒8。

力のいる今の京都コースを換算しても、スローペースと呼べる流れでレースが進む。逃げるジョーカナチャンの脚色は衰えず、最後の直線に差し掛かった。

 

残り200m。

内を走るジョーカナチャン、2番手にはカラクレナイ。外からアイラブテーラーが上がってくる。

脚色はアイラブテーラーが勝っている。

だが、ジョーカナチャンとカラクレナイが必死に抵抗。さらには大外からシヴァージが物凄い脚色で伸びてくる。

 

しかし、アイラブテーラーが逃げ粘るジョーカナチャンを交わしてゴール。

1/2馬身差の2番手にはジョーカナチャン。

3番手にはカラクレナイがシヴァージの猛追をしのいでのゴール。

5着には京都金杯からの連闘で挑んだボンセルヴィーソ。

タイムは1分9秒6だった。

 

 

 

 

■各馬短評

 

1着 アイラブテーラー(1番人気)

 

これまでのレースを見ると、中団より後ろから追い込みに徹するレースを得意としていた。だが今回は、武豊騎手が意識的に先団に付く競馬を実行。そこで結果を残せた辺り、馬も充実期に入ったかも知れない。

 

母のタケショウレジーナは長距離を得意とするダンスインザダークの産駒でありながら、芝1200m戦で3勝を挙げた馬。母のスピードを、娘がしっかりと受け継いでいる。

 

これで7戦5勝2着2回。

本番の高松宮記念を前に1戦挟むかもしれないが、重賞競走勝ち馬が6頭揃ったこのレースで勝利した事で、スプリント戦線に新星が登場したとしても過言ではないだろう。

 

 

2着 ジョーカナチャン(13番人気)

 

前走のルミエールオータムダッシュ(新潟・直線1000m)で10着と大敗した事もあってか、今回は13番人気の低評価。しかし、ルミエールオータムダッシュの前は1勝クラス(500万下)から3連勝していた。

 

また、これまでダートで勝ち星を挙げ、重馬場の芝でも勝つなど、どちらかといえばパワータイプのスプリンターであるこの馬にとっては、今の京都の馬場は合っていたかも知れない。

 

今回好走したからといって即重賞で通用するかといえば、判断は難しい。だが、リステッド競走で好走したので、そのほかのオープン競走でも侮ってはいけない馬ではあるはずだ。

 

3着 カラクレナイ(3番人気)

 

折り合いの付け方が難しい馬で、以前は馬群の中で折り合いを付かせてレースを行っていた。しかし、今回は馬群に入れずに外からの競馬になったものの、そこで折り合いを欠くシーンは見られなかった。

 

大野騎手とのコンビで5戦1勝3着3回と好相性。社台グループ系の6歳牝馬なので春にも引退するかもしれないが、次走以降も注目したいコンビである。

 

 

4着 シヴァージ(2番人気)

 

勝負どころの3コーナーで川田騎手が立ち上がるほどの不利を受け、4コーナーでは後方まで下がっていった。そこから大外に持ち出し、最後の600mはメンバー中最速の34秒2をマーク。勝ったアイラブテーラーから0.2秒差まで追い込んだあたり、不利さえなければ勝ち負けになっていただろう。

 

芝レースに転向してから2戦目となるが、スプリント戦の流れに対応できれば更なるステップアップが期待できそうな馬。

次走以降も期待したい。

 

 

■総評

 

1分9秒4というタイムは2007年以降、良馬場で行われた淀短距離ステークスで最も遅い決着となった。ただ、今の京都競馬場の芝コースは時計が掛かる馬場。これを考慮すれば、1分8秒台のレース内容だったと思う。

特に勝ったアイラブテーラーはG1レースの高松宮記念でも通用しそうな馬と見える。

昨年の春秋スプリント王者ミスターメロディ、タワーオブロンドンに加え、グランアレグリア、ライトオンキュー(京阪杯優勝)と新星が続々に出現するスプリント戦線。

久しぶりにスプリント界が活況を増してきた印象だ。

 

改めて、アイラブテーラーの血統表を見る。

母方の祖母タケショウティアラの父にはニホンピロウイナーの文字があった。アイラブテーラーのスピード能力は、もしかすると曽祖父から遺伝したものなのかもしれない。

 

 

文・おかのひろのぶ

写真・tosh

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